更新日:2022年10月07日 10:19
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なぜ、最高裁判決は保守的なのか?「原発をとめた裁判長」が伝えたいこと

裁判官に必要な心構え

――裁判官に必要な心構えとはどのようなことなのでしょうか。 樋口:やはり法規範の根本を定めた日本国憲法に忠実でいて欲しいということです。日本国憲法は、人権、つまり人が人間らしく生きる権利を保障する上で、非常に良くできていると思います。原発訴訟を担当して改めて日本国憲法の素晴らしさが分かりました。日本国憲法の精神に立ち返れば、何が大切かが自然と見えてくるはずです。 例えば、原発訴訟では、人格権(※2)を元に原告が差し止めを主張しているのですから、当然に原発が人格権を侵害するおそれがあるかどうかを判断しなければならないということになります。つまり、原発が人間の身体生命の安全に危害を及ぼし、人格的生存を侵害するものなのか否かを判断しなければなりません。 その姿勢があれば、原発の耐震性に着目するでしょうし、そうすれば即座に結論が出るでしょう。先入観にとらわれなければ、原発は危険であり、再稼働させてはいけないという結論になると思います。 裁判官の本分はその一つひとつの仕事が社会の一隅を照らすことにあるのかもしれません。しかしごくまれに、社会全体が進むべき道を照らす仕事が与えられることもあります。現役裁判官には、物事の本質を見る感性を鈍らせずに、毅然としてその本分を尽くして欲しいですね。 (※2)人格権=幸福追求権を既定する憲法13条、生存権を定める25条を根拠として認められるものであり、個人の人格的生存に不可欠とされる権利のこと
ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。
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