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コンビニのレジでたくさんの「“ありがとう”を言ってもらえる」アバター接客の嬉しい誤算

東大卒業後、司法浪人「自分には価値がない」と思っていた

月生田和樹

アバター事業プロジェクトリーダーの月生田和樹氏

 そんな「アバター接客」をグリーンローソンに導入すべく開発に携わったのは、ローソンの理事執行役員で事業サポート本部副本部長、法務部長でもある月生田和樹氏だ。  月生田氏は東大法学部出身。検察官を目指し司法試験を受けたものの、4年間の司法浪人を経て諦めたという過去を持つ。気になるのは、検察官志望から、なぜローソンに入社したのか? 「司法浪人を4年もしているうちに、だんだん『自分には価値がない』と思ってしまうようになって。そのうち仕事をさせてもらえるならなんでもいいや、と考えるようになっていました。そこで様々なアルバイトを経験。ポスティングや宅配会社での荷物整理、カラオケ用の曲を耳コピで作る仕事にも応募したりしましたね。そんな中、正社員として拾ってくれたのがローソンだったんです」(月生田氏、以下同)  ローソン入社後は直営店での勤務を経て、1年後に本社法務部に異動。法学部出身で司法試験に挑戦していた経験を買われたのだ。取引先との契約の確認やコンビニのM&Aの手続き、中国などを中心とした海外進出への契約交渉や海外法務の現地規制の確認などを担当、法務部長にまで登りつめた。穏やかな人柄から、「優しすぎる法務部長」と呼ばれるほど社内では慕われている。

「法務部長」が1年でアバター接客を実用化するまで

そらとくん

男性アバターの「そらとくん」。女性アバターには「あおいさん」という名前が付けられており、いずれもローソンカラーの青が由来(ローソン提供写真)

 月生田氏の肩書は現在も「法務部長」。にもかかわらず、アバター接客を主導したというのはどういうことなのだろうか。 「ローソンは自分の業務以外にもやりたいことがあれば、その活動をおおらかに認めてくれる社風です。2年ほど前から社内ではデジタルツールを使って業務効率をアップしようという動きがあり、私はあるソフトウェアの活用による業務の効率化をボランティア的に広めていました。昨年3月にはさらにその活動を広げ、DXに強い総務部を立ち上げました」  だれもが知る大手企業の法務部長といえば、かなり多忙な仕事であることは想像に難くない。だが、月生田氏は「ローソンには拾ってもらって法務部長にまでしてもらった恩がある。社内で役に立つことがあれば何でもしたい」という想いが強く、社内DX推進や全社向け勉強会などの社内人財育成にも力を入れていた。そのように業務の垣根を越えて働くことを、ローソンの竹増社長も「いいんじゃない」と認めてくれていたのだという。そんな活動を続けるなか、2021年に出会いがあった。
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ローソンクルーの「あきこちゃん」がアバター接客をしない理由
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インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。X(旧Twitter):@KA_HO_MA

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