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コンビニのレジでたくさんの「“ありがとう”を言ってもらえる」アバター接客の嬉しい誤算

アバター・ロボット工学の石黒浩教授との出会い

「2021年の1年間は、法務部の仕事は部下に任せ、私は幹部向け研修に参加していました。その中で、アバター・ロボット工学の研究をしている大阪大学の石黒浩教授と出会ったのです。石黒教授はロボット工学を研究している方ですが、“人と人とのつながり”を創るためにロボット工学を研究されていると話されたことに感銘を受けて。ローソンも全国にリアル店舗をもち、省人化を進めつつも人と人のコミュニケーションが大事だと考えています。そこに共感できたのです」  石黒教授の研究するロボットやアンドロイドの技術を活用することで、人材不足が叫ばれるコンビニ業界に新しい道を模索できるのではないか……そう考えた月生田氏は石黒教授にメールを送った。ロボットを使うとなるとコストがかかってしまうが、デジタルアバターならコンビニで導入できるのではないか……そんな提案から話は一気に加速。  石黒氏の立ち上げたアバター技術の会社「AVITA株式会社」の協力のもと、アバター接客の開発が進められることになったのだ。 「最初は1つのアバターを1人の人間が動かす1:1で話が進んでいたのですが、コンビニで導入をするのであれば、アバターと人間が臨機応変に入れ替わり操作できるn:nでの技術が必要です。ローソンは現在1万4500店舗ありますが、1人で複数の店舗での接客ができればさらに未来の可能性が広がります。  ローソン用のアバターをAVITAさんに開発してもらい、大崎の直営店でテストをしたところお客様の反応も悪くなかった。そんな中、グリーンローソンの構想があり、竹増社長から『アバター接客をグリーンローソンに導入したらどうか?』と推してもらうことができました」 

ローソンクルーの「あきこちゃん」がアバター接客をしない理由

あおいさん

店頭で接客をするアバターの「あおいさん」(ローソン提供写真)

グリーンローソンへの導入を目指し、開発がスタート。AVITA社とアバター制作に着手した。最初に作ったのは中性的な「あおいさん」というキャラクター。ローソンには「あきこちゃん」というキャラクターがいるが、なぜあきこちゃんをアバターにしなかったのだろうか? 「ローソンクルーのあきこちゃんはすでに決まった声があるのですが、アバター接客は様々な人がその声をあてがうこともあり、イメージが固定されているあきこちゃんのアバターは避けました。アバター接客をする上では老若男女問わず誰でも声をあてられることが大事だと考え、年齢や性別があまりない中性的なあおいさんを生み出しました。  しかし、男性スタッフに声をあててもらったところ『なんか恥ずかしい』と感じる人が多かったことから、男性スタッフも参加しやすいように、『そらとくん』というキャラクターも生み出すことになりました」  近年、アバターや2次元キャラクターのビジュアルに関して炎上してしまうケースも多い。しかし、あおいさん・そらとくん共に、現時点まででアバターの容姿に関するクレームはないという。そのキャラクターが年齢や性別を過剰に意識せずに受け入れられたのだろう。
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インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。X(旧Twitter):@KA_HO_MA

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