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TKO木本は「自分のことを語らない」。密着取材した作家が語る“転落を招いた原因”

「内面を見せない人」からどう話を引き出すか

——先ほども話に出ていましたが、木本さんって自分の内面をあんまり見せない人じゃないですか。そういう人から話を引き出して本を書くということに難しさはありませんでしたか? 浜口:もちろんありました。一応何でも語ってくれるモードにはなっていたんですけど、そもそも芸人さんってめちゃくちゃ頭の回転が速いから、自分の中で構成を決めて話をする癖があるんですよね。テレビやライブで話すときにはそのスタイルで良いんですけど、小説にするにはどうやってそのフォームを崩させるか、みたいなところがあって。 木本さんが何かを話すときに「そのときにどう思ったんですか?」とか、かなり細かく感情を聞いたりしたんですよね。「なんでそこまで聞くん?」って思われていたかもしれません。あえてフォームを崩して、本音を引き出すようなことはしていました。

今まで聞いたことがないエピソードが出てきた

——なるほど。芸人さんの話って「フリ・オチ」で成り立っているから、オチのためのフリが必要最小限のものになってるんですよね。でも、小説にするならそこに厚みを出さないといけないですよね。 浜口:そうなんです。特にTKOさんクラスのベテランの方は、もうプロ中のプロなので、そこをどう崩すかっていうところから始めました。だから、浪速座っていう松竹の劇場の話をするときにも「劇場の内部構造ってどんな感じでしたか?」「床がギシギシ鳴ってたんですか?」とか、感覚的な話を細かく聞いていったら、ふと記憶が蘇ってきて、今まで聞いたことがないエピソードが出てきたりしたんですよね。なるべくそういう聞き方をして、普段のトークの中には入れていなかった記憶を引き出す作業みたいなのはしていました。
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「小さいことの積み重ね」が転落を招いた
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お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『教養としての平成お笑い史』など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで

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