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「TKO木下の修正依頼は1か所だけ」取材を重ねた作家が直面した“謎のこだわり”

「当時のTKO」は本当にカッコ良かった

浜口:あの当時の大阪のお笑いブームって異常なんですよね。本にも書きましたけど、TKOさんがラジオ番組で、バレンタインデーの日にチョコレートを持って鴨川に集まれ、って呼びかけたら、すごくたくさんの人が集まったって言うんですよ。だから、感覚的に100人とか200人なのかなと思っていたら「3000人です」って。とんでもない数ですよね。 ——千原兄弟とか、ブームの中心にいた吉本の芸人が人気があるのはまだわかるんですよ。でも、松竹のTKOもそこまでファンが増えるっていうところに、当時のブームの広がりを感じますね。 浜口:東京の人にはわからないかもしれないけど、当時のTKOさんって本当にカッコ良かったんですよ。木下さんも今より痩せていたし、服装もおしゃれだったし。ネタもポップな感じだったんですよね。 ——その若手時代の話で面白かったのは、木本さんの圧倒的な行動力や社交性が、TKOというコンビを引っ張っていたということです。事務所の先輩の森脇健児さんに会うためにラジオ局に勝手に忍び込んで、ネタを見てもらって気に入られる、とか。事務所にライブをやらせてもらえなかったから、アメリカ村で自主的にゲリラライブをやる、とか。

勝手にチラシを配る…木本の異常な行動力

浜口:あと、当時の木本さんは歌手の渡辺美里さんが好きすぎて、「GROWIN’ UP」っていう曲をどうしてもオリコン1位にしたくて、自分で勝手にチラシを作って駅前で配っていたらしいんですよ。普通そんなことする?って思いますよね。 ——その行動力のおかげで若手時代のTKOは人気者になるわけですが、一方で、投資トラブルのときにはその能力があだになってしまった感じもありますよね。 浜口:そうですね。ご本人に聞いたんですけど、投資を勧めている感覚はなかったみたいなんです。「俺の知り合いにこんなすごいやつがおってな……」って熱弁を振るっていたら、勝手に向こうから相談されるらしいんですよ。僕のお金もその人に預けさせてもらえませんか、って。木本さんって自分が良いと思ったものを相手に勧めるプレゼン能力みたいなものが異常に高いんですよね。 ——そういうプレゼン能力や行動力があるのって、ビジネスパーソンとしてはすごく良いことじゃないですか。でも、皮肉なことに、投資トラブルに関しては、その能力のせいで悲劇が拡大してしまったっていうところがありますよね。 浜口:そうそう、普通の人だったらあんなに大金を集められないはずなんですよ。
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後輩に厳しいのは「優しい」から
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お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『教養としての平成お笑い史』など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで

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