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「TKO木下の修正依頼は1か所だけ」取材を重ねた作家が直面した“謎のこだわり”

あっさり騙されてしまう経緯を描いた

——あと、木本さんは最初に被害に遭ってから、それを取り戻そうとして第二の被害に遭いますよね。この本の中ではその部分が一番読みごたえがありました。全く警戒せずにあっさり騙されてしまうじゃないですか。 浜口:あそこは、すでに正常な判断ができなくておかしくなっている感じを書いたんですよ。一言で言えば「なんでそんな話に騙されるの?」で済む話なんですけど、物語として通して見ると納得できるように書きましたし、自分も同じ状況に置かれたらそうなっているかもしれない、とも思いました。 ——ギャンブルで大金を注ぎ込んで損をしていると、そこで終わったらその損失が確定しちゃうから、負けを取り戻すまでやめられなくなって余計に傷口を広げてしまう、っていうのがあるじゃないですか。 木本さんの場合はそれだけじゃなくて、芸能人であるというチップも張っているんですよね。バレたときに芸能人として仕事ができなくなるし、ほかの人からお金を集めていた分の責任も取らないといけない。お金だけじゃなくて信用も賭けているから、途中で降りられなくなったんでしょうね。

後輩に厳しいのは「優しい」から

浜口:あと、木下さんの事件の影響もあったみたいです。ペットボトル一本投げただけで炎上して解雇される時代に、1億円以上のお金を投資トラブルで失ったことがバレたら、絶対に芸能界にはいられなくなる、と。そうやって考えると全部がつながっているんですよね。 ——浜口さんはこの本を書くにあたってお二人と話していて、それぞれの人間像についてどういう印象を持ちましたか? 浜口:木本さんはとにかく人柄が良いですね。芸人さんってある程度売れてくると本当にみんな良い人しかいないんですけど、その中でもさらに良い人やなと思いました。 後輩に厳しかったという話もありますけど、それも優しさから来るものなんですよね。注意する方が面倒臭いじゃないですか。でも、本人のために「ちゃんとしいや」って言える方なんですよね。 ああいうトラブルがあると、芸人界隈でその人の悪い噂が一斉に広まったりするじゃないですか。でも、木本さんに関してはそれが全くなかったってみんな言うんですよね。それぐらい人が良いんやなと思いました。 みなみかわさんもコラムで書いてましたけど、おっちょこちょいで抜けているところがあるんですよ。行動力があって頭も切れるから、普通だったら嫌なやつに見られてもおかしくないんですけど、ちょっと抜けているところがあるのがかわいげになっているんです。 あと、言語表現がすごく巧みな人やなと思いました。感情表現のボキャブラリーも豊富で、作家の僕から見ても、ここでこんな表現してくれはるんやって驚くところがいっぱいありました。
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「能力の高さ」に改めて驚いた
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お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『教養としての平成お笑い史』など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで

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