そう言って遠藤氏は、夏子氏のSNSに最近投稿されたという1枚の写真を見せてくれた。元義両親、夏子氏、そして隣には別の男性が写っている。 「彼、東京出身で、ご両親との関係がよくないらしく、岩井姓を名乗っているんだそうです。ベストな相手を見つけたのかもしれません」 　恋愛を駆け引きとするなら、結婚はさしづめ家同士の綱引きといったところか。家に対する思い入れの薄い者には執着する理由のわかりにくい問題だが、ある価値観の人間にとってさまざまな感情を持ち込まざるを得ないテーマかもしれない。自陣に引きずり込むためならば、どんな手を使ってでも相手を絡め取ろうとする――その闇は誰しもの身近にあるのかもしれない。 ＜取材・文／黒島暁生＞ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter：@kuroshimaaki