日本は貧しい国なのか、それとも豊かな国なのか?元日銀副総裁がわかりやすく解説
相対的貧困は、絶対的貧困ほどの厳しい貧困ではありませんが、大人であれば、他の人たちに食事や映画鑑賞などに誘われても参加できないとか、子供であれば、部活ができない、毎日同じ洋服しか着られないといった状況に置かれる、というように、「独りぼっちで、人並みの社会的な生活」を送ることができない点が問題です。
このような状態に置かれた子供は、「自分はダメな人間だ」と自己否定感を抱くようになり、自己や他人を傷つける非行や犯罪に繋がるケースがあるといわれます。
相対的貧困率も子供貧困率も、1990年代に上昇し、’12年にピークをつけた後、アベノミクス期間に相当する’15~’18年は低下しています。貧困率が上昇した期間は、日本がバブル崩壊から低インフレに、さらにデフレに陥った期間です。
この期間の特徴は、雇用の悪化です。失業率が上昇し、有効求人倍率が低下すれば、低所得者が増加し、社会保障制度が不十分であれば、相対的貧困率と子供貧困率が上昇するのは当然です。ここにも、デフレの悪と現役世代に冷たい社会保障制度の欠陥が表れています。
東京大学大学院経済研究科博士課程退学。上智大学名誉教授、オーストラリア国立大学客員研究員などを経て、’13年に日本銀行副総裁に就任。’18年3月まで務め、日本のデフレ脱却に取り組んだ経済学の第一人者。経済の入門書や『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)、『自由な社会をつくる経済学』(読書人)など著書多数
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