仕事

社員になれなかったコンプレックスで新入社員いびり。パートが告白する「心の闇」

Aさんが人知れず抱えていた苦悩

 実は元々真面目なAさんは、時給制でパートとして入社して、担当の仕事に専念して数年間専門性を磨いたそうです。 「入社時も、担当の先輩社員が来て仕事をさっと教えただけで、すぐ別室に行ってしまいました。私は残され、基礎を繰り返したり、パソコンで検索したりして、コツコツと一人で積み重ねてきました」とAさんは言いました。  しかし、同時にAさんは、苦しい思いもしたそうです。 「長くいるほかのパートさんに、備品の管理方法などで注意されっぱなしでした。それに担当の先輩社員に、業務の件で進言すると『そこまではやらなくていい』と言われたりして、腐っていました。」と、Aさんは僕に教えてくれました。 「私、あの仕事は好きでした。天職かもしれなかったです」  Aさんは遠い目をして言いました。「求人を見たとき、これだと思ったんです。でも正社員では募集がなく、仕方なくパートに応募したんです」 「本当は色々チャレンジして自分をもっとスキルアップしたかったんです」とAさんは続けました。 「でも限界があってそのニーズは満たされることがありませんでした」

Bさんへの不満という形で表出してしまった「Aさんの傷つき」

 一方でBさんは、正社員として入社後、数週間の研修を受けたり、上司にずっと同行したりなど、自分のときと対応が違ったとAさんは言います。 「立場が違うからしょうがないと自分に言い聞かせました。黙って我慢するしかないと思っていました」と続けました。  Aさんは現状に解決されない問題を抱え、それを表に出すことなく日々生活しました。そのことで行く先のない思いがBさんへの不満という形になってしまうのです。  Aさんは「Bさんは、私より優れている、成功している、だから(パートの)私より上である。」と考え、「だから自分は下であり、負け組だ」とさらに思い込み、そのことで落ち込み、怒ってもいました。  新入社員のBさんは、Aさんとの作業について、「ここも、たまに手伝いに来ます」と片手間な感覚で言ったそうです。Aさんは「誇りを持っていた自分の作業までもが低く見られたように感じ、とてもイラっとしたんです。それが本当は、自分の傷つきだということに全く気づいていませんでした」とAさんはため息をついて言いました。  Aさんは『Bさんを専門知識や意欲の足らない新入社員だ』と決めつけ、傷つきを怒りに変えたのです。そしてBさんにこの怒りをぶつければ、自分の傷つきは解決すると勘違いして、今回のような行動に出てしまったのです。
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自分の中の「闇」をケアしてもいい
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DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

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