仕事

社員になれなかったコンプレックスで新入社員いびり。パートが告白する「心の闇」

自分の中の「闇」をケアしてもいい

 Aさんがその勘違いに気づいたキッカケについて質問すると、「GADHAです」と即答しました。 「GADHAでは当事者会があって、職場での加害がテーマだった会もありました。ほかの人の話を聞いて、自分とよく似てて、ハッとしたんです。私は、自分のニーズを正しくケアすればよかったんですが、現実には他人を傷つけてしまい、会社にいづらくなりました」  そしてAさんは、少し前に退職してしまったそうです。 僕はそれを聞いて「そんなふうに違う扱いを受けたら、自分が軽んじられたと感じたり、傷ついたりするのは自然なことだと思います。それをこうして自分がやってしまった加害だと認めることは大変な勇気が必要ですよね」と伝えました。 「馬鹿にされたと思ったり、自分なんて……と卑屈な気持ちになったり、羨ましく思ったりしてしまうことはすごく自然なことですよね。誰かに、そんな気持ちを話すだけで、楽になることもあるかもしれません。それもセルフケアの一環ですね」  僕がそう言うとAさんは最初はものすごくびっくりしました。「意識して自分をケアするんですか。していいのですか」と。 「そうです。自分をねぎらうんです」と僕は答えました。 誰かに「聞いてくれる?」と相談して話したら、「それってがっかりだよね」「辛いよね」などの共感がもらえて、とても楽になるかもしれません。そうだよね辛いよねとただただ聞いてもらえたら、それだけで気持ちは軽くなります。 「家族や友人に聞いてもらえなければ、ボランティアの電話を頼って傾聴してもらうという方法もありますね」と、Aさんは外部のサービスも調べて、利用するようになりました。

セルフケアをすると他人のニーズも理解しやすくなる

 ほかにも、僕は、趣味は何ですかとAさんに聞いてみました。  Aさんの答えはこうでした。「猫と昼寝や、読書、朝の散歩、日帰り温泉などです。でもBさんが入社してからは、気持ちに余裕がなくなり、趣味に時間を割かなくなりました。そして休みの日まで仕事のことを考えて、自分を追い込んでしまいました」  今からそれらを出来そうですかと、僕がきくと、Aさんはニッコリしていいました。 「もちろんです。実は仕事を辞めちゃったあと、しばらく昼寝と温泉の生活を続けてたんです。疲れ切ってこれしかできない状況でしたが、結果的にセルフケアになってたんです。徐々に、ゴロゴロして、のんびりすることを自分に許せるようになってきたんです」  続けて、「セルフケアは早めのほうがいいんですね」と言いました。「今までは疲れ切ってからやっとセルフケアをしてましたが、最近は早めにエアコンをつけて水分を取りながら漫画を読みまくるとかしています。究極の贅沢です」と言いました。 「そしたら他人のニーズも理解しやすくなり、ケアしたいという良い循環が生まれますね。本当に持続可能な関係になっていくんですよ。仕事は失っちゃったけど、大事なものを得ました。今は、次の仕事は探さず、のんびりとセルフケアを学び直そうと思ってます。Aさんは笑って僕にそう伝えてくれました。
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被害者/加害者かもしれないあなたへ
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DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

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