更新日:2023年09月11日 19:41
仕事

“中国語学習者”は英語の100分の1しかいない?「できる人材」が争奪戦になっていた

“中国語人材”はまったく足りていない

 ネイティブと密にコミュニケーションが取れなくとも、最低限のやり取りの準備は売上のために欠かせないと多くの店舗では考えているようだ。また、5月のコロナ5類移行による中国への渡航の活発化以降、学習需要も盛り返してきているという。 「最近増えているのは、学び直しのお問い合わせですね。ビジネスのために中国語を学んでいた方の中には、コロナ禍で渡航が制限され回復がいつになるか見込めないために、中国語の勉強をストップしていた方も多かったんです。また、コロナ禍ではメールでしかやりとりしていなかった顧客と直に会えるようになったという理由で、新たに中国語を学び始めようと考えている人も多いですね」(伊地知さん)  コロナが終息したことで、ビジネスでの日中間の関係の太さが再認識され、学習意欲が高まっていることは間違いない。しかし、現に接客できるレベルで話せる人材はまったく足りていない。外国語対応に特化した人材の手配をおこなう株式会社トライフルCEOの久野華子さんは、こう語る。 「百貨店から銀行まで、様々な業界から今年の年末ごろまでの案件のお問い合わせが殺到しています。それに対して“中国語人材”は全く足りていません。とりわけ単発や期間限定の案件ではコロナ禍に対応出来る人材が減ってしまったことが響いています」(久野さん)

英語と比べて学習者の数はかなり少ない

 ちなみに「インバウンド大爆発」の状況で、中国語のみならず外国語必須の案件は毎日3〜4件必ず問い合わせがある状況だという。  中国人は、コロナ禍以前には訪日客数のトップ。在留資格を持つ外国人数ではトップの約74万4000人、日本で暮らす外国人全体の25.1%を占めている。  にもかかわらず、日本では中国語話者は少なく、学習者も少ない状況が続いて来た。英語学習者と比較すると、その数の少なさがわかる。検定試験の受験者数でみると英語の場合2022年のTOEIC受験者数は約197万人。英検は約420万人となっている。  対して、中国語はHSK(中国政府が実施)で約4万人。中検(日本中国語検定協会が実施)は約6000人となっている。検定試験の差だけで100分の1以上、その上で実用レベルのスキルを持っていて、かつ、いま仕事を探していて、現在の急な求人に対応出来る人材となれば、かなり希少だろう。
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ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』

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