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「“汚くて物乞いする下等民族”の偏見なくしたい」フィリピン水上スラムで暮らす日本人男性の波乱万丈

東京でホームレス生活を発信

松田大夢「目的は特になかったよ。全財産の5000円だけ持って、『まぁなんとかなるだろう』って感じで行った。友達も知り合いもいないし、住むアテもなかったけど、ホームレス生活すればいいやって。ホームレスって、お金も住む場所もないから、“それ以下”がないじゃん。いちばん底を経験しておいたら、すごく強いよなって思ってさ」  秋葉原の駅前でホームレス生活を送りながら、その様子をSNSで発信していたそうだ。そのうち自宅に泊めてくれる人が現れるようになり、交流が広がっていった。  そして出会ったのが、フィリピンのセブ島で活動するNPO法人『セブンスピリット』の代表だった。 「セブンスピリットは、“音楽教育を通して、スラム街の子供にライフスキルを身につけさせる”って活動をやっていて。面白そうだったから、俺もセブ島に行って参加させてもらうようになったんだよ」    このとき大夢さんは19歳。セブ島でNPOの活動を手伝いながら、街中のストリートチルドレンと触れ合うようになる。それがバジャウ族と接点を持つきっかけとなった。

フィリピンでも最貧困の部族「バジャウ族」と出会う

フィリピン「物乞いの子供たちの中に、バジャウ族がいたんだよね。どういう環境で生活しているんだろうって興味を持って、子供たちに村を案内してもらった。彼らの水上コミュニティにたどりついたとき、ワクワクしたよ。ダウンタウンとは環境がまったく違って、異世界みたいな雰囲気でさ。そこからバジャウ族と一緒に寝泊まりしたり、漁をしたりするようになったんだ」  海の遊牧民とも言われるバジャウ族は、1000年以上の歴史を持つ少数民族だ。フィリピン、インドネシア、マレーシア周辺の海域で暮らしており、独自の文化を築いている。  彼らは海上に作られた高床式の水上住宅に住み、漁業を生業としてきた。しかし近代化にともなう埋め立てや環境汚染により、漁獲量が激減。コミュニティ一帯はゴミがあふれてスラム街と化し、住民たちは相対的貧困に追いやられている。  
船着場

ゴミで埋め尽くされたバジャウ族の船着場

「バジャウ族は、言葉や文化や宗教、大事にしているものがフィリピン人と全然違う。だから都市部の生活に馴染めない。そもそも十分な教育を受けていない人が多いから、就職のチャンスも少ないんだ。フィリピン人からは『汚くて物乞いする下等民族』って目で見られているんだよね」
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「偏見をなくしたい」
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福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0、Instagram:@0ElectricSheep0

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