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「“汚くて物乞いする下等民族”の偏見なくしたい」フィリピン水上スラムで暮らす日本人男性の波乱万丈

「偏見をなくしたい」バジャウ族支援の基金を立ち上げる

フィリピン イメージだけで嫌われるのはもったいない。そう感じた大夢さんは、バジャウ族支援のための「ヒロム基金」を立ち上げる。 「みんな、イメージだけで『汚い』って偏見を持っている。彼らは金銭的には貧しいけど、仕方なく質素な生活をしているわけじゃない。水上でのシンプルな生活が、バジャウ族本来の、昔ながらのスタイル。それが、俺はすごく魅力的に思えてさ。だから彼らの魅力をもっと伝えて、偏見をなくしたいって思ったんだ」  基金だけでなく、Tシャツなどのグッズ製作・販売、クラウドファンディングも行った。集めたお金でサリサリストア(※フィリピン独自の小売店)の出店に協力するなどして過ごしているうちに、とある転機が訪れる。

外国人で初めて、バジャウ族の村に住むことを許される

自宅

いちばん最初に建てた自宅

「村の様子をSNSで発信していたら、『大夢に会いたい。バジャウに行きたい』って人が増えてさ。そのとき俺は半ホームレス生活をしていて、遊びに来た人を迎え入れられる家がなかった。どうしようって思って、仲良くしていたバジャウの村長に『ここに家を建ててもいい?』って相談したんだ。特別に許可が出たから、村の空いているところに一人暮らし用の家を建てたんだよ」  外国人でありながら、バジャウ族の村に住むことを許可されたのは、大夢さんが初めてだった。 水上スラム 自宅を構えた彼は、「バジャウ族のことをもっと知ってほしい」という一心から、“バジャウ族ツアー”を始める。彼らの漁船に観光客を乗せ、地図に載っていない島や、秘境のビーチを巡るツアーだ。 ツアー「バジャウの文化と魅力を詰め込んだツアーだね。バジャウ族って、傘の骨を解体して手作りの銛(もり)を作って漁をしているんだけど、それを使ってツアー客も一緒に魚を捕るんだ。それと、彼らは物乞いのときに、ゴミから作った楽器を使って歌ったり踊ったりするんだけど……完成度の高いストリートパフォーマンスだって思ったから、観光客の前で披露してもらうようになった。フィリピンの中では物乞いとして下に見られていても、ツアーの中ではエンターテイナーとして活躍するんだ
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日本で居場所がない人たちの駆け込み寺
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福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0、Instagram:@0ElectricSheep0

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