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母からの暴力に“愛情を感じた”20代女性の主張…「私と母にしかわからない事情がある」

「つい先日わかったのですが、祖母が私を探しているらしいんです。本当に困ったなと思って」  看護師の山本愛夢氏(20代)は、やや声を潜めてそう話した。現在は祖母との直接のやり取りはなく、親戚を介して情報が伝わってくる。  山本氏が祖母と母親と暮らしていたのは、10年以上前まで。その後、「祖母に殴られるあなたが可哀想だから」という理由で、母親は祖母との別居を決めた。
山本愛夢

2023年7月〜8月にかけて、インターナショナル・フォスターケア・アライアンス(IFCA)主催の渡米プロジェクトでスピーチを行う山本愛夢氏

祖母から、そして母からも暴力を受けていた

「私が看護学校に入学したことは祖母に伝わっています。それからは音沙汰がありませんでした。祖母が役所で戸籍を取り寄せた際、私の転籍を知ったようでした。それで現在住んでいる役所までわざわざ来て調べようとしたのだと思います。ただ、もちろん役所は個人情報を渡さないので、しらみ潰しに役所周辺の病院を訪ね歩いたらしいのです」  祖母の暴力から娘を遠ざけた母親。だが山本氏は、他ならぬその母親から暴力を受けて育った。 「母はシングルマザーで私を育てました。今よりも世間で片親の存在が受け入れられていなかった時代なので、私が他所様に対して失礼がないよう厳しくしていたのだろうなというのは幼い私でもわかりました。殴る蹴るは日常茶飯事で、虐待だと感じたことはありません。躾だから当然と思っていました

何度も児童相談所のお世話になっていたが…

 虐待の事実は、たびたび第三者によって指摘されている。たとえば、こんな具合だ。 「小学校低学年のとき、母から首を絞められました。その際、首に母の爪が食い込んで傷ができたのを発見した担任が児童相談所に通報したようです。このときのことは記憶が曖昧ですが、しかし何事もなくまた普段の生活に戻りました。  その数年後、身体にアザがあるのを見つけた当時の担任によって、また児童相談所に通報されました。このときは私と相談所の方で個別面談をし、母とも個別で面談が行われました。結果、『躾の範囲内』だとされました。その後も私の泣き声などが理由で近所の人から通報されたりはありましたが…」
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虐待されても「母を絶対視していた」理由
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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