更新日:2023年11月16日 03:54
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「包丁で心臓を…」小4で“人生に絶望した”20代女性が両親から目を離さない理由

「え、いま両親に対して思うことですか?」  筆者の問いかけに驚いた表情を見せ、数秒間黙ったあと、内山田さゆり氏(仮名・20代)はこう言った。 「すみやかに死んでほしいです。ただ、実際にはまだ時間がかかると思うので、現在は両親の側に住んで“監視”を続けています」  幼い頃から両親に虐待を受け、憎しみを隠さない彼女が実家近くに住んでいる理由は、“監視”のため。それは、実家に置いてきてしまった猫と、「行方不明」の妹に対して両親の牙が剥くことに対する“監視”なのだという。
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画像はイメージです ©kapinon

「蒸発した妹」を血眼になって探す両親

 数年前に両親の前から行方をくらました妹の居場所は、内山田氏だけが知っている。以来、両親は自分たちのもとから蒸発した妹を血眼になって探している。 「両親は動物虐待もしかねない危険な人たちですし、妹のことも探し出して連れ出そうと考えているのではないかと私は思っています」  内山田氏の幼少期は、困難の連続だった。幼い頃からASD(自閉症スペクトラム)の傾向が強くみられたという彼女は、「小学校くらいから変わった子だったのかもしれませんね」と話す。

数十分間蹴り続けながら…

 具体的には、友達を作ることが苦手だった。必要だと感じたこともなければ、仲良くしたいと思ったこともない――。だが、それが母親との軋轢を生んだ。 「母は自分の世間体が大切な人で、みんなと仲良くできない私をストレスに感じていたのだと思います。今でも覚えているのは、小学校3年生のころ、近所の子たちと遊んでいたときのことです。もちろん、私は母が『遊びなさい』とうるさいので気乗りしないけれど一緒に居た感じでした。  詳細は省きますが、その子たちと意見の食い違いがあり、向こうの主張に明らかな論理的破綻がありました。私は理詰めでその子を泣かしてしまい、結局、先方の保護者が出てくることになりました。  その日、母は私を数十分間蹴り続けながら、『あんたのせいで、他のママ友と仲良くできないじゃない!』と叫んだのです。私は『この人は私の気持ちよりも、他の保護者からの見え方が大切なんだな』とわかりました。自分が構築してきた人間関係を、不出来な娘に破壊されたことが不愉快だったのでしょう。私が机の下に逃げても追いかけて蹴り続ける母の姿は、そういう風に映りました」
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小学校低学年のときに「裸で男湯に行かされた」
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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