中学生で「死を覚悟した」ことも…気鋭のピアニストが「ネットの誹謗中傷」に全く動じない理由
15歳でフランス・パリに渡り、パリコンセルヴァトワール(パリ国立高等音楽院)に満場一致の首席にて入学、その後も首席で修了し、フランス市立地方音楽院のピアノ科において教鞭を執るなど、輝かしい経歴を誇るピアニストがいる。
栗原麻樹氏だ。故・中村紘子氏をはじめ国内外の著名なピアニストに師事し、その才覚を認められてきた。専門誌『月刊ショパン』2023年4月号では表紙を飾っている。
誰もが認める音楽エリートであり、リサイタルに毎回訪れるファンもいるほど人を魅了する音を奏でる反面、その素顔は想像よりもあけすけで親しみがわく。赤く染め上げた髪の毛と軽快なトーク、そしてX(旧Twitter)上でもクソリプには容赦なく反撃するなど、クラシック音楽の上品さから想像もつかない離れ技を繰り出すことも。
栗原氏の半生を振り返るとともに、アーティストとして第一線を走り続けるための矜持について聞いた。
栗原氏がピアノを始めたのは3歳のころ。ピアニストだった母親から指導を受け、幼少の頃よりピティナピアノコンペティション、全日本学生音楽コンクールなど数多くのコンクールに上位入賞した。
本格的な名声を得たのは、浜松国際ピアノアカデミーコンクールにおける上位入賞。併せてモストプロミッシングアーティスト賞を受賞した。その後も大阪国際音楽コンクール第2位、フランスアルカッション国際ピアノコンクール第1位、フランスマイエンヌ国際ピアノコンクール第1位など、華々しい入賞歴に目を奪われる。だがこれらは、血の滲むような努力に支えられたものだ。
「母が私を生んだのは40歳近くになってからでした。音楽を真剣にやりたいと思いながらも田舎暮らしで周囲からの理解を得られなかった母が一人娘にかける期待は、それは多大なもの。朝から晩までピアノを弾くのは当たり前で、優先順位としては、学校の授業よりもピアノのレッスンが上です。小学校は私立に通っていましたが、あまりに出席日数が少なくて、途中で公立に編入したほどです」
当然、指導も苛烈を極める。
「指導に熱が入れば、殴る蹴るは当たり前です。今なら問題になってますよね(笑)。ただ、コンテストの順位などで叱責を受けたことはなくて、あくまでピアノとの向き合い方などが真摯さを欠いている場合に、鉄拳制裁されました。父はピアニストとしても母に心酔していた元ファンなので、たぶん普通の家庭だったら父親が『やりすぎじゃないか』と止めに入るような場面でも、ノンストップでした(笑)」
来る日も来る日もピアノを弾く。思春期などに嫌気はささなかったのか。
「私はピアノを弾くために生まれてきたんだと納得していたんです。むしろ、小学生くらいのときは、みんな何かしらのために1日の大半を捧げているものだと思っていました。食べる時間と寝る時間以外はすべてピアノで、遊ぶなんて考えたこともありませんでしたね」
「学校の授業よりもピアノのレッスンが上」だった
食べる時間と寝る時間以外はすべてピアノ
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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【告知】
栗原麻樹ピアノリサイタル
〜千夜一夜物語〜
2024年5月27日(月)
19時開演 21時終演予定
東京文化会館(上野駅より徒歩1分)
全席自由¥5000 18歳以下¥2500
オフィシャルHP
SNSなど
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