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上司のパワハラで“パニック障害とうつ病”を発症した新人OL。夜職を選んだワケは「稼げるし、優しい」

風俗は一般職より「稼げるし、優しい」

 昼職を辞めた華恋がチャットレディの職に就いたのは、新型コロナの猛威が振るう2020年春だった。最優先としたのが「昼職から離れることと以前より余裕のある生活」だった。一般の人間はたとえカネのためであってもそこまで飛躍はしないだろうが、華恋にとっては自然な流れだった。学生時代に少しだけデリヘルで働いたことがあり、風俗は一般職より「稼げるし、優しい」ことを知っていたからだ。  だが、これまで高収入を謳っていたソープやデリヘルであっても、このときばかりは違った。コロナ感染を恐れて客離れが起こり、簡単には稼げる状況になかったのだ。そこにきて非接触の「ネット風俗」であるチャットレディには、新型コロナ対策として感染しない利点がある。調べると、疲弊する業界にあっても好調なのがわかった。そしてチャットレディになり、去年末まで4年ほど続けた。いまはチャットレディをマネジメントする運営の仕事に就いているという。 「(チャットレディを選んだ)いちばんの理由は、やっぱり出勤が自由なところ。当欠しても大丈夫、っていう安心感がものすごくあって。普通のバイトとかだったらやっぱり休んだりしたらクビとかなっちゃうじゃないですか」  華恋は「自由出勤を基準に風俗を選んだ」とした上で、カネが欲しかったっていうのもあるけど「結局は風俗に逃げちゃったなっていうのがあります」と話した。 ――どうして「逃げちゃった」という表現になるの? うつ病やパニック障害にさえならなければ昼職でもよかったってこと? 「はい」 ――転職すればパワハラを受けた上司はいない。別の昼職に就くっていう選択肢はなかったの? 「ありませんでした。また同じことが起きるんじゃないか。上司が変わっても怒られるんじゃないか。そんな恐怖心があって」 ――風俗は怒られることがない? 「ありますよ。普通にありますけど、最初の面接のときに『自分はこういう障害持ってるんです』って話せば、やっぱり(昼職と比べて)圧倒的に優しいんですよね。だから優しく私の話に耳を傾けてくれたし、『じゃあ、一緒に社会復帰目指そう』って言ってくれた。向こうは、とりあえず女の子が欲しいわけじゃないですか。だから表向きかもしれないけど、そこに釣られて、みたいな」 ――障害を知った上で受け入れてくれた、と。 「そうです。面接では、パニック障害が発生した出勤できなくなることがあるって正直に言いました。その上で、『それでもいいよ』って言ってくれました」

かたちを変えても続いたハラスメント

 では、働いてみて、実際はどうだったのか。障害が引き起こす華恋の症状を、まだ目の当たりにしていない上司の生半可な理解が、かえって混乱を広げる懸念も大きい。加えて、どんな事態を想定しての採用なのかが曖昧なのでは。そんな思いで質問を続けた。 ――うつ病やパニック障害の影響で仕事を休むこともあった? 「ありました。家が出るのが怖くなって当欠したことも一度や二度じゃありません。最初の、それこそ昼の仕事を辞めて間もないときは特に」 ――仕事中は? 「本当に無理な場合は、音声や映像をオフにして自由に休憩できたりとかするんです」 ――つまりチャットレディの仕事は、障害を持っていてもやりやすかった? 「やりやすい部分もあったけど、正直言って、やりにくい部分もあったなっていう。そのやりにくい部分っていうのは、例えばお客さん対応してるときに嫌な言葉(隠語や過激なパフォーマンスのリクエスト)を言われると、どうしても躊躇したり言葉に詰まっちゃったりしたり。頭が回らなくなっちゃって、『ど、どうしたらいいんだろう?』みたいな。あと、やっぱり男性スタッフさんから『もっとお客さんのリクエストに応えて』とか言われると、昼職のときみたいに『もう無理かも』って」 ――昼職時代のようにハラスメントもあった。なのに、なぜ風俗は続けられたの? 「もう風俗しかなかったから。仕事もない、昼職でも働けない、っていう自覚があって」  男性スタッフからの指摘に悩んでいると、今度はいまより15キロほど太っていた華恋の容姿を見て女性スタッフから『アンタはブスなんだから。もっと痩せないと売れないよ』と罵倒されてしまう。華恋に対するハラスメントは、結局かたちを変えておさまらなかった。
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ショック療法に近かった
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月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に社会・風俗の犯罪事件を取材・執筆。著書に『売春島 「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』、『黒い賠償 賠償総額9兆円の渦中で逮捕された男』(ともに彩図社)、『裏オプ JKビジネスを天国と呼ぶ“女子高生”12人の生告白』(大洋図書)など。X(旧ツイッター):@takagimizuho2

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