仕事

うつ病ニート&ひきこもりが未経験から起業、“ふたり出版社”の本が人気「読めなくても、ほんの一握りの光みたいになってくれれば」

全くの未経験から立ち上げ…ひとりorふたり出版社は増加傾向に

サイン会

『鬱の本』がヒットし三省堂でイベント、サイン会も行った

 現在、点滅社のようなひとり出版社、小規模出版社の立ち上げが増えている。出版社のデータベース『版元ドットコム』によると、2016年2月には、参加会員数は215社、現在は545社と、8年で約2.5倍に増えた。 「新聞記者だったが、知られていない地元の人たちの活躍を書籍という形にしたい」「ブックライター(ゴーストライター)をしていたが、大きな組織から離れ、もっと著者の思いを反映させたい」など……。多くは編集・メディア経験のある人たちが「自分が作りたいもの、推したい人の書籍を出版したい」と、組織では通りにくい企画・出版物を作るため立ち上げる。     出版関係者の話によれば、背景には、印刷会社が少部数の印刷に対応するなど「頼みやすい業者さんが増えた」ことや、出版社として資本を集めずとも、会社として立ち上げやすくなったこともあげられるそうだ。また、「出版も表現の一つ。例えばYouTubeでの動画や音楽のように、書籍も技術的、環境的に発表しやすくなった」とも。  しかし、編集経験の無い屋良さんのような人が作るケースも今後は増えていくかもしれない。  実際、屋良さんも、島田潤一郎さんが全くの未経験から「夏葉社」を立ち上げた起業体験記『あしたから出版社』(晶文社)を「20回くらい読み返すくらい好きだった」と影響を受け、勇気をもらったと言う。  夏葉社もまた、点滅社と同じように、編集未経験、仕事も続かないと語る社主が“誰かのために本を作る”ために立ち上げたひとり出版社だったのだ。

「点滅社は点いたり消えたり…でも生きているよ」

『点滅社』の由来は“暗闇の中を照らすサーチライト”だ。  屋良さんは「俺が照らすからお前が行け」と大好きな筋肉少女帯の歌詞を引いて語る。 「でもサーチライトほど強い光ではない。憂鬱だったりで、点いたり消えたりする。でも生きているよ。『点滅社ががんばってるから、自分も頑張るか』そういう人たちのために頑張らなくちゃなと思う」と言う。  さらに「やめたら死ぬ。1冊目の時も出せなかったら死のうと思っていた。今回『鬱の本』が売れて、もう少し続けられる。10冊は絶対に出る。ISBN(書籍識別番号)を10冊取得していて、これを全部使い切るまでは何が起きても頑張ろうと思っている」と“背水の陣”は変わらないようだ。  次に作ろうと思っているのは「自由律短歌」集だと言う。屋良さんは「口語自由律の世界は、人生を諦めている感じの歌人が多くて好き。流行ってほしい」と語る。  2人は今日も、ランタンのように風に消されては灯しながら、書籍を作り、生の光を発信し続けている。 『鬱の本』は今年中に3刷目も予定しているとのことだ。 <取材・文/遠藤一>
1
2
3
4
おすすめ記事
ハッシュタグ