「脱・安売り路線」が成長の土台に
以上のように持ち帰り客とデリバリーの売上増加が全社業績に貢献した形ですが、
その土台となったのは以前より進めてきた脱・安売り路線にあると筆者は考えています。
マクドナルドは1987年の流行語にもなった390円の「サンキューセット」で安売り路線を歩むようになり、バブル崩壊後の90年代、00年代は不景気下に合わせて異常なまでの安売りをするようになりました。2002年にはハンバーガーを過去最安値の税込62円で販売しています。
当然ながら極端な安売り路線は利益を圧迫しました。
その後も安売り路線は継続した一方、業績を回復させるべく店舗のFC化を進めました。2004年に3割程度しかなかったFC比率は14年度に7割まで拡大しましたが、急速なFC化が店舗におけるサービスの質の低下をもたらしてしまいます。結果的に業績は一時的に改善するも再度悪化し、
マクドナルドに関して消費者の間では「安かろう、悪かろう」のイメージが定着するようになりました。
この安売り路線をやめたのが2013年に社長に就任したサラ・カサノバ氏です。一部でお得な商品を残すも段階的に値上げを実施し、利益の改善を図りました。
店舗の質改善に関しては全国の店舗を回って顧客や現場の意見を取り入れ、賃上げ等でインセンティブを強化するとともに人材教育を強化しました。
また、ファミリー層や大人が来たくなるよう、古い店舗の改装や店舗改革を進めています。カサノバ氏以降の脱・安売り路線はマクドナルドのブランドイメージを改善し、2015年からコロナ前の19年度にかけて増収増益が続きました。
安さ目的で行く店から、多少割高でも行きたい店に変化できたわけです。仮に以前のイメージのままだったら、中食需要の増加とはいえコロナ禍でここまで躍進できていなかったと思われます。
さて、22年度から24年の中期経営計画では24年度の全店売上高(SWS)7,520億円以上、営業利益増加率年平均3~5%などの目標を掲げています。とはいえ、前述の通り23年度のSWSは7,778億円とすでに達成済みで、他の目標についても達成済みとなっています。
なお、
建替えや店内改装など、古い店舗の改善は継続するようです。地方でも近年、古い店舗がカフェのような居心地の良い店舗へと生まれ変わっており、店舗の改善を進めれば依然軟調なイートイン客も増える可能性があります。
ちなみに24年度はSWS8,260億円と23年度と比較して5%増を見込んでいます。
今期1、2月単独では前年同月比5%以上を達成しているため、このペースをキープできれば目標を達成できるでしょう。
日本マクドナルドの歴史は50年以上もあります。今後どのような戦略をとっていくのか、長期スパンで注目していきたいものです。
<取材・文/山口伸>
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:
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