「このままでは邦楽は“浮世絵”になってしまう」音楽史をひも解いて見えたJ-POPのユニークさ<みのミュージック>
YOASOBIの「アイドル」やCreepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」が世界的にヒットしている。サブスク全盛で海外の音楽ファンもJ-POPを楽しめる時代になった。しかし、日本人は自国のポップス史についてどれぐらい知っているのだろうか? 海外のファンに説明できるほど音楽のヒストリーを共有できているのだろうか?
そんな危機感にかられて、『にほんのうた 音曲と楽器と芸能にまつわる邦楽通史』(KADOKAWA)を上梓したのが、音楽評論家でチャンネル登録者数44万人超を誇る「みのミュージック」で知られるみの氏(@lucaspoulshock)だ。J-POPとは何か? また音楽から浮かび上がる日本とはどんな国なのだろうか? 存分に語っていただいたインタビューの前編。
―――『にほんのうた』は縄文時代から現代までの大衆音楽を振り返る大著です。改めて執筆に至る問題意識と動機についてお聞かせください。
みの:2019年から運営しているYouTubeチャンネル「みのミュージック」で解説などをしていく中で、最初はカジュアルに話していたものが、徐々に評論の領域とオーバーラップしていく感覚があったんですね。そこで専門的に勉強していったときに、邦楽史をひとまとめに振り返られる資料がないことに気づいたんですよ。
サブスクの時代になって邦楽が海外のファンに聞かれるようになるのは素晴らしいけれども、一方で日本人が自分たちの歴史を知らないままグローバルな音楽のヒストリーに合流していくのは危うい。かつての浮世絵のように、日本国内であまり評価されていなかったものが海外で評価され、逆輸入的にムーブメントになるなんて事態は避けたい。そんな気持ちから、誰もやらないんだったら自分が書こうと決めたわけです。
―――今日はその中でもJ-POPにクローズアップしたいと思います。本書には、明治時代の文部官僚の伊澤修二が中心となり音楽教育も西洋化へとかじを切る様子がダイナミックに記されています。<いわば国家レベルで、日本人の音感を変えようとする巨大事業である。>(p.88)と書いていますが、日本語を五線譜にはめ込むことで生まれた“ねじれ”を前提とするJ-POPが海外のヒットチャートへ進出していく時代になりました。これは日本人の洋楽に対する感性や受容の仕方が洗練されていったと理解していいのでしょうか? それとももっと複雑になってガラパゴス化の道をたどっているのでしょうか?
みの:基本的に国内の傾向はガラパゴスだと思っています。J-POPの歴史を見ていくと、常に2つのグループが並走しているんですね。ひとつは、最先端の洋楽を解析して翻訳する。マーケティング用語でいう、“アーリーアダプター”的なミュージシャンですね。たとえばフリッパーズ・ギター、山下達郎、さらに昔なら服部良一のような人たちです。もうひとつは、アーリーアダプターが解析した洋楽をより歌謡曲に寄せて大成功を収める人たち。基本的にはこの2本立てなんですね。
ただ、それでも最終的に日本人に訴えかける音楽性は極めてガラパゴス的なものに収斂していく傾向にあると思っています。そのガラパゴス的なものが海外のリスナーに違和感なく受け入れられるようになったのは、単純に海外の人たちが日本的な歌謡っぽさのツボを理解し始めたからなのではないでしょうか。日本人が洋楽的な作曲を得意とするようになったというよりは、海外の人が日本の味付けを楽しめるようになったという感じですね。
邦楽が「浮世絵」のようになるのは避けたい
フリッパーズ・ギター、山下達郎、服部良一
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『にほんのうた 音曲と楽器と芸能にまつわる邦楽通史』 YouTube「みのミュージック」で独自の音楽批評をおこない、多くの大人たち・音楽関係者を魅了する著者の第二弾
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