『離婚しない男』でも挿入歌に。中西保志の「最後の雨」が30年以上歌い継がれる理由
どの局の音楽番組を見ても、中西保志が熱唱している。1992年にリリースされた最大のヒット曲「最後の雨」を30年以上歌い続け、その都度、リスナーの心をふるわせている。
老若男女、どうしてこの曲がじんじん刺さるのか。あるいは、そもそもどうして30年以上も歌い継がれてきたのか。その理由が、意外や意外、2024年1月期屈指の話題作『離婚しない男-サレ夫と悪嫁の騙し愛-』(テレビ朝日)にあるのだとすると……。
イケメン研究をライフワークとする“イケメンサーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、「最後の雨」が歌い継がれる理由を最恐不倫ドラマから読み解く。
今、全国のカラオケで一番歌われているのは、YOASOBIが2023年4月12日にリリースした「アイドル」である(2024年3月時点)。一部、ヨナ抜き音階が使われているサビが、メロディアスな歌物だけれど、アーティスト本人以外がカラオケで歌うにはちょいと難易度が高くないかしら?
あるいは、10代〜40代まで幅広い世代が歌うポルノグラフィティ「サウダージ」(2001年)にしろ、本人なら当然ピッチが安定する高音域もキツくて、とてもじゃないけど歌えない。自分が歌うより聴いていたいと思う難易度高めナンバーが、むしろカラオケの定番曲として親しまれている。
ぼくなんかが知らないだけで、もしかして、日本全国カラオケの猛者だらけだったり……。こうした群雄割拠の状態は、実は、今に始まったことではなくて、さかのぼること30年以上、限られた音域の間で最高音を目指し、歌いこなす最強の高音ナンバーがすでにあったのだ。
1992年8月10日にリリースされ、オリコンチャートでは初登場から55週にわたってチャートアクションを繰り広げ、リリース当時73万枚以上のセールスを記録したのが、中西保志の代表曲「最後の雨」。実はこの年、現在の通信カラオケが導入され、ヒット曲をカラオケボックスですぐに歌うことが可能に。1995年にカラオケ人口が5850万人になり、カラオケが老若男女にとって最大の娯楽になった。
そんな背景が後押しして、このハイトーン中西ナンバーがカラオケでよく歌われた。“泣けるほど 愛したりしない”の“愛”の高音を見事に決めたなら、そりゃ好きな相手の心だって瞬間的にキマってしまう。失恋ソングなのに、必殺口説きナンバーになるという逆転現象だ。
古典音楽の世界にちょっと目を向けると、同曲リリースのちょうど100年前、1892年には、チェコの作曲家ドヴォルザークがニューヨークに渡り、有名な交響曲第9番《新世界より》の作曲に着手している。
音楽の歴史ってほんと奥深くて、複雑で、面白い。まさかドヴォルザークから100年後の日本では、カラオケ猛者たちが、まるでベルカントオペラの名テノール歌手のように競って、「最後の雨」の超高音に挑んでいたと考えると、なんだか笑える。
日本全国カラオケの猛者だらけなのか…
「必殺口説きナンバー」になる逆転現象が
コラムニスト・音楽企画プロデューサー。クラシック音楽を専門とするプロダクションでR&B部門を立ち上げ、企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆。最近では解説番組出演の他、ドラマの脚本を書いている。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
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