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ロイヤルホストと「安さがウリのファミレス」で分かれた明暗。“質にこだわる姿勢”が功を奏す結果に

リスクが分散されず、業績は大幅に悪化…

リスク分散になるはずの多角経営も、事業の特徴からコロナ禍では全事業の業績が悪化しました。2019年12月期から23年12月期までの業績は次の通りです。 【ロイヤルホールディングス株式会社(2019年12月期~23年12月期)】 売上高:1,406億円→843億円→840億円→1,040億円→1,389億円 営業利益 :46.5億円→▲192.7億円→▲73.7億円→21.9億円→60.7億円 売上高(外食事業):626億円→463億円→451億円→535億円→619億円 売上高(ホテル事業):303億円→140億円→167億円→232億円→295億円 自己資本比率:49.6%→19.7%→31.0%→35.8%→38.0% 20年12月期に至っては全社40%、ホテル事業単体で54%の減収となりました。外食事業については必需性の低いレストラン業態、てんや業態が悪化の要因です。とはいえ「てんや」に至っては天丼並盛を税込500円から540円にした18年1月の値上げ以降、業績悪化が続き、外食事業全体ではコロナ禍以前より軟調に推移していました。ホテル事業は言うまでもなく出張や旅行客、インバウンド減少の影響を受けた形です。 利益面では20年12月期の275億円の最終赤字が財務を圧迫し、期末時点の自己資本比率は50%から20%へと大幅に悪化しました。しかし翌21年には資本業務提携により総合商社・双日から100億円の出資を受け、その後も追加増資を受けたことで自己資本比率は持ち直しています。後述の通り、双日との提携は今後の新規事業開拓にも関わってきます。

ロイヤルホストがいち早く回復した理由

業績回復は現時点でも道半ばですが、ロイヤルホストはいち早く回復。22年12月期第4四半期で既存店売上高は2019年度と比較して110%台となりました。バラエティ番組『ジョブチューン』(TBS系)の放送内容がSNSで話題となるなど、メディアの影響もありますが、やはり質重視の姿勢が消費者を惹きつけたといえます。 近年、外食チェーンでは値上げやサイズ・質を下げたステルス値上げが横行しており、サイゼリヤを除いて1,000円以下で食べられるファミレスも少なくなりました。安さがウリだったはずのチェーンでその魅力が失われつつあります。 一方、ロイヤルホストは客単価が2,000円と言われ、確かに割高ですが従来通り質にこだわった料理を提供し続けてきました。「どうせお金を払うなら高くてもちゃんと食べたい」といった「ロイヤルホストに対する肯定的な意見」も見られ、質重視の姿勢が改めて評価されたと考えられます。
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海外で高い知名度を持つ「天ぷら」には可能性が?
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経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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