更新日:2024年05月16日 17:01
デジタル

モノを壊しまくる“Appleの新CM”に批判が殺到。それでもブランディングとしては「成功」と言えるワケ

Appleは謝罪に追い込まれたが…

「もし、CM内のキャラクターがリアルなCGアニメーションではなく、2Dの漫画的なアニメーションであれば、そこまで激しい嫌悪感は抱かなかったかもしれません。批判も、あそこまで大きくなかったでしょう。生々しいイメージが先行してしまい、Appleが本来伝えたかった真意が伝わらないまま終わってしまいました」  5月9日、SNS上で大きな批判を受けたAppleは、「的外れな広告だった」と謝罪。テレビ放映も見送ると発表した。この顛末を見ると、「Crush!」は失敗したCM広告に思えるが、じつは「ブランディング×炎上」という戦略に見事にハマっていたと松下氏は続ける。 「今回のCMは、Appleが当初思い描いていた場所とはちがう所に着地してしまいました。けれど、新型iPad Proは確実に私たちの脳裏に焼きつきましたよね。そういった意味では、ブランディングとしては成功しているといえるでしょう

映像はグロかったが、実にAppleらしい広告

 そして、もうひとつ。今回のCMで批判的になったのは、若い世代なのではないかとも推測している。古くからのファンにしてみれば、AppleらしさにあふれたCM作品なのだという。 「実は、Appleはこれまでにもセンセーショナルな広告をいくつも打ち出しているのです。特に、世界的に大きな話題となったのが、Macintosh(マッキントッシュ)の発売CM『1984』です」  AppleのCM「1984」とは、ジョージ・オーウェルの小説『1984』にインスパイアされて作られたMacintoshの新発売CMだ。封建的な社会に洗脳された人々が、大きなスクリーンの前に座る中、女性アスリートがスクリーンにハンマーを投げつけて大爆発を起こすという内容だ。  また、CM中にMacintoshのビジュアも商品の具体的な説明もなく、「1984年1月24日に、AppleはMacintoshを発表する」というメッセージで締めくくられる。自分たちの主張を全面的に出した、なんとも挑戦的・挑発的とも受けとれられるCMだった。
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賛否両論でもブランディングとしては成功
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経営コンサルタント、共感ブランディングの提唱者。株式会社SKY PHILOSOPHY 会長。40年近く、企業アイデンティティーやブランドコンセプトの確立を専門とし活動。2011年より「真のブランディングを世に伝える」ことをミッションに、講演、講師、コンサルティングを行う。2024年、著書『共感ブランディング®ドリル』で、自身の体系的オリジナルロジックを一般公開。ブランディングのわかりやすい実践書として高評価を得ている

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