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「餃子の王将」は年商930億円。2年間で4度の値上げも“ファンが離れない”決定的な理由

飲食店の基本三原則

 DXを活用して効率化を追求するファミレスと違い、ロボットにはできないホスピタリティある接客を目指す餃子の王将。現在、質の高い接客応対の習得を目的に、接客実地研修を実施しており、今後のスキル向上には期待したい。  餃子の王将は、同じ看板であっても、立地タイプや店舗規模に大きなばらつきがあり、そこにフランチャイズも加わり、経営形態も違うから、店によって明確な差が出ている。筆者がよく行く直営店の従業員は愛想がよく、接客が丁寧である。王将の料理が好きだから行くのだが、その人から接客を受けたいから行くのも理由のひとつだ。  こういった顧客とのリレーションシップの強化は大切だと思う。飲食店の基本三原則であるQ(品質)S(サービス)C(クリンリネス)は他のチェーン店と比較すると、見劣りする店があるのも事実。やはり店舗を率いる店長次第で、同じ看板、同じパッケージでも、差が出るものである。

餃子の王将の業績を時系列で分析!

餃子の王将公式サイト

餃子の王将の看板メニューの餃子

【餃子の王将の業績推移(2019年3月期~2023年3月期)】 売上高(前期比):816億3800万円(104.5%)→855億7100万円(104.8%)→806億1600万円(94.2%)→847億7500万円(105.2%)→930億2200万円(109.7%) 直営店既存店売上伸率:102.3%→104.0%→92.8%→103.1%→108.7% 売上総利益(率):572億6100万円(70.1%)→601億4800万円(70.3%)→560億8800万円(69.6%)→581億7500万円(68.6%)→636億5700万円(68.4%) 営業利益(率):69億2400万円(8.5%)→76億9800万円(9.0%)、60億7300万円(7.5%)→69億5900万円(8.2%)→79億8100万円(8.6%) 経常利益(率):73億1000万円(9.0%)→80億8400万円(9.4%)→68億6700万円(8.5%)→130億2400万円(15.4%)→91億4000万円(9.8%) 当期純利益(率):41億8900万円(5.1%)→53億1100万円(6.2%)→42億8700万円(5.3%)→88億0700万円(10.4%)→62億1300万円(6.7%) 総資産:639億5000万円→675億3800万円→911億5400万円→894億500万円→841億300万円 純資産(自己資本比率):468億7200万円(73.3%)→503億500万円(74.5%)→529億5200万円(58.1%)→590億9800万円(66.1%)→627億7000万円(74.6%)  王将フードサービス決算情報(2023年3月)から業績を時系列でみると、2023年3月期の売上は前期比9.7%増の930億2200万円で2ケタに近い伸び率で成長している。今年度2024年3月期の実績も、直営全店売上は925億5600万円(前年比109.1%)、と、通期においても過去最高売上を達成している。  ちなみに、客数8万1735人(前年比105.9%)客単価1132円(前年比103.1%)と総て前年比を上回っている。FC売上を含む全社売上高(決算上の売上高)は、26か月連続で同月比過去最高を更新しており、通期では創業以来初めて1000億円(1009億8400万円)を突破している。  2023年3月末の店舗数は732店。そのうち、FC加盟店は190店舗。FC比率は26.0%で、直営店主体の店舗展開を行っている。餃子の王将は直営店が多いため、家賃や人件費などが直接費用となり、固定費が高いことで損益分岐点は高めである。だから不測の事態に陥った時のリスクは大きい。  そういった費用構造でも、2023年度実績では、営業利益率は8.6%は確保しており、収益力に問題はない。貸借対照表を見て財務状態を分析しても、自己資本比率が74.6%と財務基盤は盤石で経営の安定性は評価できる。
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損益分岐点高めだが投資家からは評価
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飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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