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焼肉店の倒産が急増する中、「牛角」「焼肉きんぐ」大手チェーンが客単価の低い“ランチ営業”を続けるワケ

生産性が低下するリスクも

 その設定額をクリアしてもっと売上が望めるのなら、アルバイトを1人追加するのもいいが、そうすると1人当たりの売上が減り、生産性が低下するから要注意だ。  ランチは原価をディナーと違って高めで設定しないと近隣の競合店に負けてしまう。原価40%程度で設定する店が多く、現在の焼肉店の主流価格である1,000円程度の売価であれば原価400円、粗利益600円になる。  ランチは12~13時に一気集中するから、限られた時間内で客席回転率を高めて機会損失を防止しないと利益はあまり出ない。最低でも水光熱費や人件費の増加分は稼ぎたいものだが、この物価高でお客の店選びがシビアになる中、そう簡単ではない。

肉食シニアが増える中、今後の展開は

焼肉

※画像はイメージです

 今は元気なシニアが多く、肉類を好むシニアが増える中、焼肉の需要自体は堅調だ。「あらゆる供給で需要を喚起」をスローガンにしてランチ需要を取りに行く積極果敢な店もあるが、主要食材である肉類の値上がりは店全体の採算を悪化させるリスクがあるので要注意だ。  一般的に、人口が増加して市場が伸びるのなら、売上至上主義を徹底し、市場シェアを高めれば経営的にメリットが多い。しかし、売上が全てを癒す時代ではなく、今は人口減少で市場規模が縮小するから、利益中心主義に転換しなければ経営を維持できないとはよく言われること。    効率的な経営をするなら、客単価が高く効率的な運営が可能なディナーに特化したほうが得策と考える経営者は多い。  焼肉ライクのように昼夜(一人焼肉)の客層が同じで高効率のオペレーションが確立されているなら、営業時間を拡大して売上を求めるのはよく分かる。中長期的視野に基づきランチが店の利益に対するか否かを適切に判断しよう。 <TEXT/中村清志>
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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