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「文化遺産」として見直される昭和の都電。「アニメの聖地」や「渋沢ゆかりの地」などに残る都電の今を追う

東京都交通局 都電おもいで広場/5501号・7504号(荒川車庫前)

 唯一となった都電の基地「荒川車庫」。ここには3両の昭和の都電が保存されており、2007年に開設された敷地内の展示施設「都電おもいで広場」に展示されているものは土・日・祝日に車内に入ることができる。
都電

荒川車庫に2007年に誕生した「都電おもいで広場」。ここには2両の都電が保存されている(写真:若杉優貴)

 都電おもいで広場で保存・公開されている車両は5501号と7504号の2両だ。  そのうち5500形5501号は1954年に製造され、1967年に廃車となった車両。5500形はアメリカの高性能路面電車「PCCカー」の技術を導入して製造されたものだった。  戦後の都電を支える新世代電車として期待されたものの、他車と操作方法が異なるため運転しづらいうえに故障が多く、また東京の狭い街を走るにはこれほどの高性能は必要ないとして、のちに在来車に近い性能・操作性に改造された経緯がある。  都電の花形として中央通りを走る1系統(上野-銀座-品川)専用車として活躍したのち、1967年の1系統の廃止とともに廃車、その後は上野公園で保存されたものの荒廃したため1989年に荒川車庫に移設され、2007年に都電おもいで広場で公開されることとなった。  5501号の車内は現役当時とはかなり異なる状態で、都電の部品やヘッドマークなどの展示がおこなわれているほか、荒川線のシミュレーターも設置。また、南側の運転台のみ特徴的な「PCCカー」独特のペダル式運転台も復元されている。
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戦後を支える高性能車として生まれた5500形5501号。「都電おもいで広場」開設当初は、この写真のように新製時のキャピタルクリームに塗装されていたが、2019年に廃車時のイエロー塗装に塗り替えられた(1つ前の写真を参照)(写真:若杉優貴)

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5501号の南側の運転台は登場当初のペダル式運転台を再現。反対側の運転台には運転シミュレーターが設置されている(写真:若杉優貴)

「学園号」の愛称が付けられた7504号

 もう1台の7500形7504号は1962年に製造された車両。もともと7500形は東京オリンピック・パラリンピック(1964年)の開催に備えて造られたもので、それゆえ当初は全車両が都心エリア(渋谷・六本木など)を担当する青山車庫に所属していた。  古い都電といえば正面にヘッドライトが付いている姿が思い起こされるが、この7500形は経費削減のためバスや自動車の部品を多用しており、それゆえ2つ目となった。1978年にワンマン化改造、末期は荒川線で通勤通学ラッシュ輸送専用になったことから「学園号」の愛称が付けられ、1990年代末に運用停止となったのち2001年に廃車。  2007年から5501号とともに都電おもいで広場で公開されている。こちらの車内は廃車された当時の様子が復元されている。今では珍しくなった木張りの車内を歩いて、木の床独特の音と油の匂いを感じながら都電全盛期に想いを馳せてみて欲しい。
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都電全盛期最後の新造車両となった7500形の7504号。荒川線に移籍後、ワンマン化改造された姿で保存されている。当時の都電のワンマン車両は青帯を特徴とした(写真:若杉優貴)

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7504号。平成まで活躍した車両だが車内には木の床が張られており、「昭和の都電」の雰囲気を味わうことができる。1977年のワンマン化により路線バスと同様の「降車ボタン」が取り付けられた(写真:若杉優貴)

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都電6086号が保存されているのは…
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都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitter:@toshouken

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