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焼肉店の倒産が過去最多。牛角、焼肉きんぐ…「大手」が店舗拡大する一方で「個人店」は苦境

大手焼肉チェーンは知恵を絞る

焼肉きんぐ

売上は770億円の「焼肉きんぐ」

 食べ放題を中心に多店舗展開する大手は、干ばつなど供給要因や為替要因から輸入肉(牛豚)の仕入れ額の上昇に頭を悩ませている。食べ放題を実施する店は輸入牛を使用するのが通常だ。以前は、牛肉だけの注文が集中すると原価的に厳しいから、豚肉にシフトさせるようメニューを工夫していたが、その豚肉さえも高騰中だ。  お店からすると麺飯類を食べて早くお腹を膨らましてほしいが、「それは別腹」「焼肉だから肉を食べねば」という客も多く、そう簡単に店の思惑通りにいかない。最近は、ご飯の仕入れ値も上がって深刻だ。肉類の高騰からしたら影響度は小さいかもしれないが、焼肉には白米がよく合うから店にしては困った問題だ。  ということで、大手焼肉チェーンの戦略は、肉以外の低原価の一品メニューも食べ放題にして魅力度を高めつつ、原価率の高い肉の追加量を抑え、原価を圧迫させずお腹を満たしてもらうというものである。お客さんも色々と食べられ、店側も原価低減に繋がる。双方が満足できる食べ放題だ

人件費の抑制にも限度がある

 一般的に外食店は、FL(原価・人件費)コストの管理が重要で60%以内に抑制しないといけない。そもそも焼肉は、調理のメインである「焼く」をお客さんに任せることと、一品メニューを簡単メニューにすることで、職人の必要がなく、コックレスの仕組みを確立して人件費を抑制できる特性がある。  職人の高い給料が不必要な分を原価に充当しているから、焼肉食べ放題などは費用構造的に成り立っているものだ。しかし、アルバイトを中心に運営する外食店においても、そのアルバイトは完全な変動費ではないため、あまり削りすぎると定着せず、常に新人で運営すると大きなムダが発生する。  そのため、店への忠誠度を高めて運営力を強化させる人の管理が重要だ。「企業は人なり」はどんな業種業態でも共通した課題である。
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絶対的なファンに支えられた個人店も
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飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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