更新日:2025年01月03日 12:27
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「心理的虐待を受けた経験を持つ」29歳女性が思う“献身的な母親像”への違和感…「そばに居続けることだけが愛ではない」

核家族での子育ては「母親に著しく負担が偏りすぎる」

――應武さんは核家族で子育てをすることの限界、殊に母親に著しく負担が偏りすぎることへの危惧を述べておられます。その原因はどのようなものだと考えますか。 應武:原因は複合的だと思います。1つは日本社会に蔓延する“母性神話”のようなものはあるでしょう。母親の自己犠牲の精神に支えられた家庭は多く、子どもや夫に尽くす姿こそ清いという幻想がいまだに残っています。お互いにフルタイムで仕事をしている夫婦で、立場としては変わらないはずなのに、家事・育児の負担比率が妻に偏っているときは、さも当然。一方で夫に偏っているときは世間に持て囃される。不思議ですよね。  もう1つは、「頼るのが苦手」な人が多いことです。夫婦だけで家事育児を抱え込まないために家事代行やファミリーサポートサービスが存在していますが、案外「知ってはいるけれど利用していない」という層が多いと思います。「こんな理由で使っていいのかな」という引け目があったり、「家庭内のことをアウトソーシングしてはいけない」という圧力を感じたり、また「家に人を入れたくない」「知らない人だと気を遣う」といった声も耳にします。

義母が理解のある人で良かった

――應武さんも、そうした経験がありますか。 應武:あります。「すいまーる」設立以前、義実家に住まわせてもらっていたのですが、出産後にファミリーサポートを活用して好きなバンドのライブへ出掛けました。内心、義母がなんというか怖い気持ちもありました。しかし義母はとても理解のある人で、「私たちの時代はそうした発想がなかったけど、先進的でいいね」と評価してくれたんです。あのときもしも否定的な言葉をかけられていたら、私も世の中のお母さんと同じように自分が楽しむことを諦めていた思います。
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「私たちの生き方」が「他の誰かの選択肢の1つ」になれば…
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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