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「ボキャブラ天国」「電波少年」で活躍した50歳芸人の今。“統合失調症”でテレビから消えて20余年「人の人生は終わったところで始まる」

陰性症状の苦しみ

精神科病院には7か月入院したが、2009年までは自宅療養することになった。芸人としての活動を再開するも、陰性症状にも苦しむ。 統合失調症の症状は、主に陽性症状と陰性症状に大別される。陽性症状は、特に幻覚や幻聴が強く出やすい。他にも、妄想、思考の乱れ、行動の乱れが含まれる。対して、陰性症状は、感情の平板化、意欲の低下、社会的引きこもりなど、通常の機能が減少または失われる症状で、生活の質に影響を与える。陽性症状は目立ちやすい一方、陰性症状は見過ごされがちだ。 「記憶力がなかったり、集中力がなかったりして、舞台に立つのに、初めてアガりました。『ちゃんとハウス加賀谷を演じなければいけない』と思い込んでいました。だけど、その時にふと、ちゃんとしたハウス加賀谷ってなんだ? と思いました。2018年には、陰性症状を飼いならせるくらいに回復しました」 2018年までは精神的にきつかったという加賀谷氏だが、今はフランク・シナトラの「マイ・ウェイ(My Way)」のような心境だという。

人の人生は終わったところから始まる

今は、東京都中野区の「ぼうずママ」で「ハウス加賀谷と共に学ぼう、心の病い」などの座談会や映画を語る会のイベントを開催している加賀谷氏だが、同じような病に苦しむ人に伝えたいことを聞いた。 「XなどのSNSを見ると、“人生終わった”と書いている人がいますが、人の人生は終わったところで始まると思っています。一概に、悲観的になることはないですよと伝えたいです」 統合失調症の発症は遺伝要因、生物学的要因、環境要因が複合的に関わる。遺伝的脆弱性とストレスがリスクを高める。社会の理解が重要だ。遺伝はどうにもならなくとも、加賀谷氏が経験したように、ストレスの少ない環境下では幻覚や幻視が軽減されるというケースもある。当事者にとって一番のストレスは、社会の無理解ではないか。 <取材・文/田口ゆう>
立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1
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「ハウス加賀谷と共に学ぼう、心の病い」や映画の会は、今後は、早稲田にある交流Barあかねで引き続き継続していきます。
交流Barあかねでの映画の会は1/25、「ハウス加賀谷と共に学ぼう、心の病い」は2/15開催予定。