更新日:2025年03月28日 11:21
ライフ

「3万軒のスーパー」に行った東大卒の女性が、スーパーにハマったまさかの理由。今ではその道の第一人者に

東大を目指すきっかけは…

――東京大学を目指したのは、なぜでしょう? スギ:高校時代、生物のカリスマ教師との出会いがターニングポイントかなと。いつも着物を着ていて、映画『極道の妻たち』に登場しそうな雰囲気の美しい女性の先生で。授業もいわゆる普通のカリキュラムではなくて、「生き物について自分で調べて思ったことを発表しろ」「真面目に考えてくれないなら私は教室から出ていきます」という独自の授業を展開していて、私のそれまでの人生で出会ったことのないような強烈な人物でしたね。その先生が東大卒で、「私も東大に行けば、こんな素敵な女性になれるかも」と憧れて、東大に行こうと思ったんです。

失恋を経て、人生観が大きく変わる

吉池

20歳のときに足繫く通ったスーパー吉池。今でも常連だ

――東大に入学して、農学部に進まれましたが、どんな学生生活を送っていましたか。 スギ:大学時代にアルバイトをしていたのがスターバックスコーヒー。そこで気になる男の子ができて、バイト終わりにお茶をするくらい仲良くはなりました。でも、どうしても恋愛関係にはならずに、友人関係のまま。ある時、私は「こんなに仲がいいのに、どうしてこの先に進めないの?」と思い切って聞いてみました。すると、彼に「君はスーパーで大根1本がいくらするか知ってる?」と返されたんです。 それから、「例えば、一緒にご飯を作ろうとなった時に、予算2000円で食材を買ってやりくりして美味しいものを作るなんてこと、君は得意じゃないでしょ? 女性が美しいとか頭がいいとかを否定するわけじゃないけれど、一緒にいたい子は日常のことがやりくりできる子だし、人間としての魅力はそういうところにも現れると僕は思っている」と言われてしまって、ショックで……。人生の中で最も大きな大失恋でした。 ――その男性も、すごいことを言いますね(笑)。 スギ:ただ、ものすごく説得力がありました。どんなに最先端の科学情報や遺伝子の知識やノウハウを知っていたとしても、「今のままでは人間としての魅力が全くないぞ……」と気付かされたんです。机上の勉強ができるよりも前に、リアルな暮らしが楽しみ、自分の生活をやりくりすることができないとダメなんだと。 そこで私は、学校帰りに毎日、御徒町のスーパー「吉池」に通うようになりました。とにかく品揃えがすごくて、鮮度も抜群。もちろん肉も野菜も素晴らしい最高のスーパーです。吉池で食材について知るようになり、他のスーパーはどうなっているんだろうといろいろなスーパーを巡っていくうちに、だんだんとモテ始めたんです(笑)。恐らく人としてのバランスが整ってきたんだと思います。それが20歳の時の話ですね。
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東大院に進学するものの、研究者の道に進まなかったのは…
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1982年、札幌市生まれ。中央大学卒業後から10年間、光文社『女性自身』記者として芸能人や美容・健康分野の取材を担当。2016年独立後、雑誌の取材に加え、写真集や書籍の構成・編集なども担当
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