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吉野家とすき家で”大きな明暗”。牛丼に次ぐ第二事業「はなまるうどん」も停滞…「ラーメン業界進出」に勝機はあるのか

成長は止まり、第二の事業も停滞…

 なお、近年(20年2月期~24年2月期)における吉野家HDの業績は次の通りです。一部事業売却で規模が縮小した影響もありますが、売上高はコロナ禍以前の水準を下回っています。 【吉野家ホールディングス(20年2月期~24年2月期)】 売上高:2,162億円→1,703億円→1,536億円→1,681億円→1,875億円 営業利益:39.3億円→▲53.4億円→23.7億円→34.3億円→79.7億円 吉野家店舗数(国内):1,214店→1,189店→1,190店→1,197店→1,229店  特に21年2月期は都市部偏重の立地が影響し、すき家よりも客数が大きく減少しました。不採算店の閉鎖で利益率は改善していますが、以前のような店舗拡大は難しい状況です。今期は100店舗規模の出店を目標としていましたが、2月末時点で1,259店舗と30店舗増に留まりました。  第二の事業である「はなまるうどん」も芳しくありません。20年2月期の売上高は309億円、店舗数は500以上ありましたが、24年2月期はそれぞれ292億円、418店舗と縮小しました。今年1月末時点でも415店舗と、国内800店舗以上を展開する丸亀製麺に大きく差をつけられています。

“第3の柱”を建てられるかが焦点に

 すき家のゼンショーと比較すると、規模の違いは歴然です。ゼンショーは牛丼以外にも回転寿司やファミレス業態を手掛け、近年ではM&Aにより欧米のテイクアウト寿司店を取得しています。20年3月期の売上高は6,304億円で、24年3月期は9,658億円となりました。円安で海外事業の売上高を増幅。国内外、牛丼から寿司と、地域・ジャンル問わず手広く事業を展開しています。  とはいえ、新業態店の開発を怠っていたわけではありません。牛丼、うどんに次ぐ第3の柱としてラーメンに焦点を当て、近年ではラーメン店の買収を進めました。また、子会社を通じて海外にラーメン店を出店しています。昨年12月には新業態店としてカレー専門店と唐揚げ専門店もオープンしました。ただし、いずれも本格的な展開には至っていません。  飲食店でヒット作を見つけるには、ベンチャー投資と同じく様々な業態に投資をする必要があり、現在は模索段階にあります。牛丼事業の拡大が見込めない以上、新たな収入源を立てられるかが今後の業績を左右することになるでしょう。 <TEXT/山口伸>
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_
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