大型バスのハイテク居眠り防止機能を体験【後編】

関越自動車道で発生した大型観光バスの事故を受けて、国土交通省は事故再発を防ぐための緊急対策を実施。ツアーを企画する旅行会社に交代運転手の配置計画などの安全に関する情報を、販売サイトに表示するよう義務づけた。利用者が増える夏場に向けた緊急対策ということだが、技術の力で事故を防ぐ手立てはないのだろうか?

西村直人=文 Text by Nishimura Naoto
池之平昌信=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu

⇒【前編】はコチラ http://nikkan-spa.jp/236681

◆1台約4500万円!運転スタイルを学習し居眠りを防止する大型バスを運転した【後編】

エアロクィーン

バスには、大型トラックに義務付けられているスピードリミッター規制がないので、30度バンクの最上段を時速140kmで疾走なんてことも余裕でできます(もちろんテストコース)

 今回試乗したのは、三菱ふそうトラック・バスの「エアロクィーン」(56人乗り、約4500万円)。

 3段階切替え式電子制御のエアサスペンション&ステアリング機構を採用したことで、乗客に対する最高の快適性を提供しながら、天候に左右されない卓越した走行性能も披露。その走りは、ストレスフリーで安全運行に従事できると、運転手からも好評の大型観光バスだ。

 乗用車では、衝突前に自動でブレーキをかけてくれるスバルの「アイサイト」やメルセデス・ベンツの「レーダーセーフティパッケージ」(上の写真のEクラスにも搭載)、ボルボの「シティセーフティ」などが有名だが、実は大型のバスやトラックにも、こうした先進運転支援システム(ADMS)が数多く採用されている。

エアロクィーン,MDAS-Ⅲ なかでも、三菱ふそうの大型観光バス「エアロクィーン/エアロエース」と大型トラック「スーパーグレート」には、運転注意力モニター「MDAS-III」が標準装備されていて、’96年から累計約2万台の販売実績があるとか。

「運転中に注意力が低下するのと反比例して、眠気は増加します。MDAS-IIIは、ドライバーの運転スタイルを学習し、注意力が低下した際に警報音と警報画面を出して注意を促すシステムです。車線を逸脱しそうになると別の警報音も発します」(三菱ふそうトラック・バス 山本恵一氏)。

 ドライバーは、眠くなるとクルマをまっすぐ走らせることが難しくなるのと同時に、フラつき運転を修正するために独特のハンドルさばきをする傾向にある。MDAS-IIIは、その兆候を15秒周期で測定しつつ、「今は大丈夫かもしれないけど、もう少しすると危ない!」的な絶妙なタイミングで、警報音を鳴らしてくれる装置。要するに、運転そのものを危険な状態に近づけない安全装備というわけだ。

 感心したのはその警報タイミング。三菱ふそうの開発ドライバーに、眠いときに出やすいハンドルさばきをしてもらったところ、「あれ? 今フラついてんの?」という程度の時に、すぐに警報音が鳴った。

 ちなみに私もマネしてやってみたが、眠くないのがバレバレだったようで警報音は鳴らず。なかなか賢いシステムだ。

 このMDAS-IIIが、運転手の情報を拾うセンサーはいたるところにある。道路の白線を認識するCMOSカメラ、車速、ステアリング舵角、ウインカースイッチなどの情報を組み合わせて、システムを稼働させているのだ。

【結論】
その後、遺族らは被害者の会を結成。運行会社「陸援隊」やツアーを企画した旅行会社「ハーヴェストホールディングス」などに誠意ある対応を求めるという。法整備と技術革新の両方で、こうした事故が減ることを願う

― 大型バスのハイテク居眠り防止機能を体験【2】 ―




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