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「貧困の連鎖」に一度落ちたら這い上がれない社会でいいのか!?

「貧困の連鎖」に一度落ちたら這い上がれない社会でいいのか!?

 20代前半からホームレスなど貧困状態になる人たちは、殆どの場合、家庭環境に問題を抱えています。子供時代から貧困を引きずっている人が多い。児童養護施設出身者や親に虐待を受けている場合です。

 彼らはそもそも親に頼ることができず、路上やネットカフェで生活せざるを得ないのです。

 例えば、大学を出た人間はそれが自分の努力の結果だと考えます。

 けれど、世の中には子供時代に読み聞かせをしてもらった経験もなく、家の中に本や新聞がない環境で育った人も多くいる。自分を肯定してもらう経験がないまま育った人もいます。

 貧困の問題を「自己責任」で片づけることも多いですが、スタートラインが違うことを知ってほしい。「貧困は連鎖する」のです(前出の「ビッグイシュー日本」の調査では、若年ホームレスの56%が貧困世帯出身、両親に養育されたのは50%、高校中退者が40%)。

 今の若いホームレスで、公園の段ボールハウスで暮らしているのは少数です。彼らの多くは路上だけでなくネットカフェやコンビニ、サウナなどを渡り歩いてるため、非常に見えづらい存在です。

 日本は’90年代からホームレス対策を旧厚生省が行ってきました。ネットカフェ難民対策も’08年から行われていますが、そちらは旧労働省がやっています。ホームレスの定義が現実に合わず、行政の縦割りの問題もあって、うまくいっていません。

 今年7月には東京都でネカフェ難民を追い出すかのような、入店時に身分証提示を義務づける条例が施行されました。この影響で、20~30代がさらに路上に放り出されています。若いホームレスたちは、数少ない寝場所すら奪われつつあります。

 突然の解雇や病気などで、誰でもいつ転落するかわからない。しかし今の社会では、「貧困の連鎖」の中に一度落ちてしまえば、たいへんな努力をしても這い上がれるとは限りません。

 若年ホームレスの放置は、社会の経済的な損失であり、犯罪の増加にも繋がります。要は、自己責任かどうかの議論よりも、私たちがホームレスの溢れる社会に住みたいかどうか、なのだと思います。

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高齢者や障害者と比べて、若年の貧困層や母子家庭に生活保護が支給されることは極めて少ない

稲葉 剛氏
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自立生活サポートセンター「もやい」理事長。 ’94年から新宿のホームレス支援を開始。著書に
『ハウジングプア』(山吹書店)など







取材・文・撮影/佐藤 慧 白川 徹 安田菜津紀





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