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35歳で人生をこじらせた男たちの行く末

 男も35歳ともなると、仕事でもある程度責任のある立場になり、結婚や子供の誕生といった人生の次のステップを歩み……と、言いたいところだが、中には次のステップへと踏み出せずに迷走し始める男性も少なくない。ここまでさまざまなover35男たちの迷走ぶりを見てきたが(http://nikkan-spa.jp/320479)、そんな彼らの現状と行く末を、世代論に詳しいライターの速水健朗氏に分析してもらった。

◆人生をこじらせてしまったover35男たちの行く末は?

億ション「男にとって35歳とは、ひと昔前までは、大人の男の遊びを覚え始める時期だったり、今の仕事をやり続けると腹を括る時期だったり、家族のために生きる決意をする時期だったりでした。そして’00 年以前は、そうした男の生き方を教えてくれた『これぞ理想の35歳』というロールモデルがいました」

 ちなみに、’80 年代のそれはトレンディドラマで人気がブレイクした石田純一であり、TV番組『Ryu ‘sBar』の司会を務めた作家の村上龍だったりしたという。

「ヒューゴ・ボスのスーツとか、バーとかが似合い、女性扱いもうまく、ものを知っている、そんな大人のイメージ」

 続く’90 年代の「理想の35歳像」は、当時『wow war tonight』を歌っていたダウンタウンの浜田雅功、『息子』を歌っていた奥田民生らだ。

「仕事もそれなりに頑張るけど、休日はジーンズを着て子供と遊ぶ『ゆるいパパ』というイメージ。皆彼らのような服を着て、彼らのように振る舞えばよかったので、ある意味ラクでした」

 ところが「’00 年以降は、理想の35歳像が出てきていない」と言う。

「年齢でいうと、SMAPがまさにその世代なんですが、キムタクはアラフォーで『宇宙戦艦ヤマト』をやっちゃうし、『ぶっちゃけ』とか言い続けてる(笑)。生き方が多様化し、結婚してよきパパになることだけが“正解”とはされなくなった社会において、画一化されたロールモデルが簡単には誕生しないのは当然です」

 この世代が「前の世代ほど出世できていない」のも不幸だという。

「今の35歳は20年前と比べて、平均年収が200万円も落ちている。そのうえ、上の世代が詰まっていて出世もなかなかできない。前に進めない現状を肯定しようとする気持ちが彼らを迷走させるのでは」

 さらに、独身やDINKSのover35男が消費ターゲットとして狙い撃ちされている点も彼らの迷走に拍車をかけている。

「これまでの35歳は、給料の大半は家のローンや子供の教育費に取られ、消費社会から撤退していましたが、今の35歳はいまだ消費世代の主役。年収が下がったとはいえ、自分のために使える小金はたっぷりあるから、ターゲットとして狙い撃ちされているのです」

 over35男が束モノアイドルにうつつを抜かすのも、背伸びしてタワーマンションに住むのも「マーケティング戦略」にノセられた結果と聞くと悔しい気もするが、かといって今さら、マイホームを建て、子供をつくって……という人生が理想だとも、実現可能だとも思えない。結局over35はこれからどうすればいいのか?

「もっと社会が彼らを許容する時代がじきに到来するのでは? 自分のためにカネを使い続ける男性は今後どんどん増えていくし、消費のボリュームゾーンとしても注目され続ける。単身男性がコミュニティを築きやすい、シェアハウス的なマンションが売り出されるようになったりとか、彼らにとって生きやすい商品が生み出されていく……といいですけどね(笑)」

【速水健朗氏】
ライター。若者論を中心に執筆活動を展開。近著にいまどきの説教くさいラーメン屋を斬る『ラーメンと愛国』がある

イラスト/ただりえこ
― 35歳が分岐点[人生をこじらせた男たち]の共通点【9】 ―

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