米金融政策「勘違い」が醸し出すバブルの香り
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過去1か月余り、米景気指標が予想より悪い結果が続いたことなどから、追加緩和思惑すら一部で浮上し始めていましたが、それは5月に入り、FOMCや米雇用統計発表などを受け一段落となったようです。でも、そういったことの有無にかかわらず、米追加緩和思惑とは、ちょっと何か「勘違い」じゃないですか?
◆米超金融緩和主たる根拠の変遷
米国の中央銀行であるFRBは、2008年12月にゼロ金利政策を採用し、政策金利をそれ以上は下げられなくなると、2009年以降は量的緩和政策、いわゆるQEをこれまで3度にわたって行ってきました。バーナンキ議長が主導する前代未聞の超金融緩和政策というわけです。
では、この超金融緩和策を続けてきた理由は何だったでしょうか。すでに2008年12月にゼロ金利政策決定から4年以上も続いているわけですが、これを続ける根拠はいくつかの変遷を辿ってきたのではないでしょうか。
最初はもちろん、2008年9月リーマンショックから急拡大した世界的な金融危機、「100年に一度の危機」からの脱出を目指すということだったでしょう。それが果たせぬまま、今に至っているということではないでしょう。2010年春にかけ、FRBでは超金融緩和見直し、出口政策、金融引き締めへの転換思惑がいったん浮上しました。
ところが、それは挫折するところとなりました。挫折させることになった一因は、2010年初めのギリシャ危機を発端とした欧州債務不安、ユーロ危機だったでしょう。その後、2011年にかけて、ギリシャからさらに欧州の大国の一つであるイタリアにも危機が波及する頃から、米金利は米景気指標で説明できないほど低下し、それは欧州不安と連動する傾向が強まりました。
この頃から、FRBは超金融緩和継続の主たる根拠を、米国外要因、つまり欧州不安として説明するようになったのです。
◆異常な政策の結果は、バブルかインフレか
その欧州不安は、2012年にはもう一つの欧州大国、スペインにも波及するなど米国のみならず世界経済を揺るがし続けたものの、2012年後半からは改善に向かい、最近ではギリシャなど一部の例外を除くと「危機」前に戻ってきました。
世界的金融危機も、欧州危機も「過去のもの」となりつつあります。それでもFRB超金融緩和は継続しているわけですが、その根拠は2012年後半頃から雇用回復の遅れということになりました。雇用が回復、失業率が6.5%へ低下するまで超金融緩和を続けるとして。
それにしても、超金融緩和とは、文字通り前代未聞の金融緩和、ある意味で「異常な政策」でしょう。それを継続する根拠が、これまで見てきたように変遷するなら、何らかの影響があるのは当然でしょう。
その影響とは、バブルの発生、または「物価の番人」である中央銀行の「異常な政策」の悪影響としては物価の高騰、すなわちインフレということになるのでしょう。そんな悪影響が出る以前でも、さらなる追加緩和論が出るということは、こんなふうに見てくるとちょっとズレているのではないでしょうか? (了)
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に
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