女子と行く「エロい京都旅行」のススメ
―[山田ゴメス]―
出版社で働く知人から、「もし面白ければ、どこかで紹介してください」と、一冊の本が届いた。『おんなの日本史修学旅行』なるタイトルの単行本で、著者は花房観音という女流作家である。無知をさらけ出すようでお恥ずかしいかぎりだが、僕、ゴメス記者はこの作家さんのことを今まで知らなかった。で、早速プロフィールに目を通してみると……次のような驚愕の事実が発覚した!
’10年に第1回団鬼六大賞を受賞し、作家としてデビューした、官能を得意とする女流作家……。と、まあここまでは作家としてはある意味スタンダードな経歴と言えなくもない。だが、ここからがなかなか異色だったりする。なんと! この花房さん、京都に在住する“現役バスガイド”なんだそうだ。
バスガイド――素晴らしいまでにスノッブかつ淫靡な響きをもつ単語であり職業ではないか。なにしろ、バスガイドには男の夢がある。たとえば、シチュエーションは男子校の修学旅行。僕のクラスのバスの担当になった、タイトなハーフスカートからむちむちの太ももが覗き見えるバスガイドさんにエロエロ夜のガイドもエスコート……。そう。バスガイドは、そんな夢を脳内で具現化しやすくするための、親近感や、より閉ざされた密室感に裏付けられているのであろうリアリティーも醸し出す。だから、我々男子は“スッチー”(今は「客室乗務員」とか呼ばなければならないようだが、あえてこう呼びたい)より“バスガイド”に、より強いリビドーを抱くのだ(一流百貨店の店頭で働くネエチャンより、マ○イのネエチャンのほうが妙にソソるのと同じことだ)。
……とまあ、与太話はこれくらいにしておいて、この『おんなの日本史修学旅行』、バスガイドという職業を通じて培ってきた、筆者の歴史への造詣の深さは並々ならぬものがあり、それらのウンチクをエロに結びつける手法は、一作家の個性として立派に確立されている。
ただ、個人的に残念なのは、ほぼ全体を占める宇能鴻一郎先生的な王道の官能小説風文体が、小学校5年生のとき週刊新潮で連載されていた先生の小説で勃起をおぼえて以来、環境上の流れで「官能小説→公園で拾った実話系活版エロ本→公園で拾ったエロトピア→親に内緒で観ていた11PM→ポルノ映画専門情報誌『映画の友』→アダルトビデオ→ネットで検索した無料配信の無修正ビデオ→夜を共にする女性にあえて観てもらう公開(「後悔」も含む)オナニー」と、ある意味ズリネタをまっとうなかたちで小市民的に即物化させてきた僕にとっては正直、欲情にまで到らなかった点だ。
だからといって、この著作が“買うに値しない”と決めつけてしまうのは早計である。ここでひとつ、思い出して欲しい。筆者が在住し職場とする“京都”が「女の子と国内旅行してみたいスポット」として、沖縄に並ぶ断トツ人気である事実を、だ(ゴメス独自調査による)。
まだ初々しい関係である女子との初の京都旅行……。当然、クライマックスに控えていたいのはセックスだ。そんなとき、『おんなの日本史修学旅行』で仕入れたネタが至極役に立つのである。「露出狂が出没していた『女坂』」「『清水寺随求堂』の胎内めぐり」「BL的な『京の五条の橋の上』」……と、どのネタを拾っても、エロと京都の歴史が当たり前のように融合している。僕的には、もうあらゆるメディアで主張しまくってきたので、「今さら?」という感じもしなくはないが、女をその気にさせるエロ話は、知性をまぶすのが一番!なのである。

―[山田ゴメス]―
大阪府生まれ。年齢非公開。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するライター兼コラムニスト&イラストレーターであり、「ネットニュースパトローラー(NNP)」の肩書きも併せ持つ。『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。保有資格は「HSP(ハイリー・センシテブ・パーソンズ)カウンセラー」「温泉マイスター」「合コンマスター」など
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『おんなの日本史修学旅行』 団鬼六賞大賞受賞の現役バスガイド作家が綴る官能日本史エッセイ ![]() |
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