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バカッター問題。欧米で起きたらどうなる?

 コンビニの冷蔵庫に入ったり、賞味期限切れのピザ生地を顔に貼り付けたり。相次いだ「バカッター」、「バイトテロ」事件では、若者の倫理観の欠如を問題視する声が相次いだが、海外では事件の見方や対処法も異なるよう。
谷本真由美氏

谷本真由美氏

 英国在住のコンサルタント・谷本真由美氏によると、「グローバル企業で同じ事件が起きれば、真っ先に批判され、処罰を受けるのは管理のできていないとされた経営幹部の側ですね」と話す。 「『わかってるよね』という暗黙の合意を前提に、従業員を信じきった性善説で運営される日本の組織に対し、英米などの外資系組織は性悪説です。就業前には分厚い業務倫理規定にサインを求めますし、そこにはSNSで組織の評判を傷つけた際の懲罰まで文書化されています。さまざまなリスクを想定し、その管理にも相応のコストもかけているわけです。なお、性悪説で組織が運営されるのは、多様な人種や宗教、言語の人々が働いており、暗黙のルールがもともと存在しないためでしょう」  そしてルール違反があった場合は、公平を期すため例外は一切なしで懲罰が適用されるという。 「『メールの私的使用で懲戒解雇』『業務用の携帯電話を紛失したために罰金2万ドル』といった実例もあり、懲罰が非常に重いので、従業員も変なことをできないわけです。一方で、明文化されたルールさえ守れば、働き方は日本より自由とも言えます」  ルールも懲罰も厳しい一方で、自由度も高いグローバル企業。その運営法を日本企業にそっくり持ち込むのは少し難しそうだが……。 「すぐに全規定を書き換えるのは難しくても、現状の倫理規定を生かし、SNSなどの新たなリスクに対処する体制を整えるべきでしょう。日本では『規定を見直すと最初に作った人が傷つく』とか言い出す人もいて困るんですが(笑)」 【谷本真由美氏】 米国の大学で情報管理学等の修士号を取得後、国連専門機関などを経て、ロンドンでコンサルティング業に従事。Twitterではめいろま(@May_Roma)の名で知られる。近著に『キャリアポルノは人生の無駄だ』 ― 今日も職場はコンプライアンスに大忙し!【5】 ―
キャリアポルノは人生の無駄だ

自己啓発書を「キャリアポルノ」と呼び、その依存症が日本の労働環境の特殊性からくることを、欧米と比較しつつ毒舌とユーモア、実例たっぷりに論じ、疲れぎみの就活学生・若手ビジネスマンにエールを送る

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