なぜマー君は打たれないのか?メジャー強打者のコメントから考えてみた
―[マー君がなぜ打たれないか]―
4月のメジャーデビューから破竹の快進撃を続け「ヤンキースの救世主」「メジャー史上最高の新人」などすでに多くの称号を得たヤンキース田中将大投手。早くも新人王とサイ・ヤング賞の有力候補に名を挙げられ、今季のメジャーで最も熱い注目を集めている。マウンドに上がる度に強打者たちを次々と三振に切って取るその圧巻の登板試合は「タナカ・タイム」と名付けられ、ニューヨークの名物となった。
しかし、メジャーの強打者達はなぜここまで田中を打てないのか。今季17試合に登板した段階で対戦した強打者たちの結果を見てみると、長打力のある主砲クラスの打者ほど、田中を打てない傾向にある。
例えば、過去2度の本塁打王に輝いたホセ・バティスタ(ブルージェイズ)は6打数無安打。本塁打王を2度、打点王を1度獲得したアルバート・プホルス(エンゼルス)や30本塁打以上を3度記録しているエバン・ロンゴリア(レイズ)は3打数無安打。首位打者に3度、MVPに1度輝いたジョー・マウアー(ツインズ)や、通算打率3割を打ち228本塁打をマークするデービッド・ライト(メッツ)は4打数無安打とお手上げ状態。田中に黒星を付けた数少ない球団カブスとオリオールズは、いずれも2度目の対戦で田中を負かしているが、カブスの主力打者アンソニー・リッゾは5打数1安打、スターリン・カストロは6打数無安打、オリオールズの主砲クリス・デービスは3打数無安打、ネルソン・クルーズは6打数無安打と、勝っているチームでさえ大砲たちは田中を打てていない。
なぜこれほどまでに打てないのか。それを解明すべく、対戦した打者たちに田中評を聞いてみると、面白い点が見えてきた。
まず対戦した打者たちの田中評をざっと紹介しよう。
レッドソックスのマイク・ナポリ「彼は4つの球種すべて、いつでもストライクが取れる。ストライクゾーンに投げる制球力は見事だ」
レイズのマット・ジョイス「自分に有利なカウントに持ち込む能力が高い。彼の一番の武器はやはりスプリッターだと思うし、それで一番打者を凡退させていると思う。しかし正直に言うと、何で打ち取られるのか分からないときもある。たまたまゴロに打ち取られているだけと思うときもあるね」
レイズのライアン・ハニガン「スプリッターを投げる投手は結構いるけれど、田中ほどのスプリッターはあまり見ないと思うよ。あの球に対応するには、何度か対戦して慣れないと難しいね。だから初対戦の相手に対して、田中は大きなアドバンテージを持っているよね。ただ、どうして打者が彼に打ち取られるのか、よくわからないね。1度対戦はしたけれど、たまたま打ち取られているのか、彼が良い球を投げているかも分からない」
ツインズのブライアン・ドジャー「スカウティングレポートによると、彼の球の80パーセントはスプリッターだということだった。実際に何パーセントかは分からないけれど、スプリッターが一番嫌な球であることは間違いないね。彼はさまざまなカウントでさまざまな変化球を投げてくるけれど、カウント2-0とボールが先行しているときでもスプリッターを投げてくるのは驚く」
アスレチックスのスティーブン・ボート「彼はストライクゾーンの真ん中に投げてくることがまずない。両サイド、低め、それを交互に混ぜて打者のバランスを崩させる」
アスレチックスのブランドン・モス「変化球が良いね。大きく変化する。なかなか打てないので、投げ損ないを狙うのがいいのだろうが、なかなか投げ損なうこともない。だから連打も出にくい。威力のある速球は持っていないけど、よく動く変化球でストライクを投げてくるから、変化球は打てない打者は打てないので、何度対戦しても打てない打者はいるだろうね」
これらのコメントから見えてきた、マー君好調の秘密とは!?
⇒【後編】「田中将大選手、好調の秘密は投球の●●●●にあった!」https://nikkan-spa.jp/676113 に続く
<取材・文/水次祥子>
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