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無職が開催する「成功者になるためのセミナー」に参加してみた

頭よさげな言葉や、やる気に満ちた言葉で自分を過剰演出することでしばしば揶揄される「意識高い系」。彼らの言葉は、なぜ人の心を逆撫でするのか? その境界線は受け取る側の世代や属性で変わるのか?

◆潜入!無職が開催する朝活セミナーは意識高い用語の連続だった

意識高い系 早朝に勉強や趣味の時間をつくって自分磨きをする“朝活”や、数人で集まって意見を交換しあう“読書会”など、巷には意識が高そうな活動が溢れかえっている。暇さえあれば数分でも寝ていたい「意識低い系」の記者だが、都内某所で平日の朝に開催されている「成功者になるためのセミナー」なるものに参加してみた。主催者は有名私立大学卒の20代前半の男性。「人生の勝ち組になるために、ノウハウをすべて伝授します!」との言葉に惹かれて応募してみたが、主催者の職歴や実績などの情報がホームページには一切記載されていない。書かれているのは、「とにかく本を何百冊も読みました! 成功者に会いまくりました!」という言葉だけ……。

 セミナー会場として指定されたのは、都内某駅前のカフェだった。しかも通勤ラッシュの時間帯で、店内はサラリーマンやOLで大混雑している。一抹の不安を感じつつ、押し寄せる人波をかき分け主催者を探す。……いた。混雑する店内で一人で4人席を独占し、マックブックと自己啓発本(カバーだけ)を広げて優雅に過ごす男性を発見。既に意識が高そうなオーラがビンビン伝わってくる。

「はじめまして!」とキラキラした笑顔で挨拶され、さっそく席につく。参加者は4人(満員)だったはずだが、ほかの2人はドタキャン。ちなみに「カフェが4人席しかないので、それが定員」なのだとか。セミナーはビジネス書を読みながら、「人生を充実させるため、仕事にとらわれず本当の優先事項を決めよう」という内容。マックブックのエンターキーを軽快に押す音を聞きながら、孤独な早朝セミナーが始まった。

◆20代無職が教える、人生の勝ち組になる術

「意識の高い無職」が開催する朝活セミナーに潜入してみた 成功するノウハウは「いかに自己投資し、戦略的思考を駆使し、不労所得を得るか」というもの。しかし全2時間のうち半分以上は主催者の波瀾万丈な自己紹介に費やされた。現在は無職だというが、20代前半という若さで、貯金を取り崩しながら不労所得を得て暮らしているのだという。「僕は金持ちになりたい。労働で対価を得る労働所得ではなく、人脈をつくってインフルエンサーになり、人に使われるだけの仕事にしばられない豊かな人生を過ごしましょうよ!」と鼻息荒く熱弁をふるう。

「使われるだけの人は、それまで育った環境や先入観が邪魔して、『不労所得で食べていこう』という意識が欠落してる。要するに意識や攻めの思考の問題なんですよ」と何度も諭されるが、内容がふんわりしていて具体性がなく、耳に入ってこない。その“不労所得”を得るために、「具体的なテクニックを教えてほしい」とたずねると、「あ、僕は具体的な方法は簡単には人に教えられないし、詳しくないので自分で調べてください。自分でコミットしないと!」と、あっけらかんとした返答に清々しささえ感じる。もはや全体的にふんわりとした主催者の熱弁よりも、迷惑そうな顔でこちらを睨みつけている隣の客が気になってしょうがない。席を占領し「成功者になる」「仕事は趣味の範囲でやろう」と声高に話しているせいか、とにかく周囲からの視線がイタい……。

 結局具体的な内容は出ず、二言目には「意識次第で人生は変わる」という話や、「僕の師匠は成功者として有名で……」と名前も一切教えてもらえない謎の人脈自慢のオンパレード。最後は参加費として600円を支払ったが、「ドタキャンが2人も出たので赤字っすよ」と、グチをこぼす主催者。これも立派な“労働所得”なんじゃ……。

 セミナーの内容はさておき、「早朝から勉強をしている自分」にうっとりと酔えた。ああ、こうして「意識高い系」は自己陶酔をこじらせていくのだな……。とりあえず、人生をゼロベースからリスケしようと心に決めた記者だった。

イラスト/大ハシ正ヤ
― 許せない[意識高い系用語]の境界線【6】 ―




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