チンポム問題作を岡本太郎記念財団が認めた「太郎を乗り越えてほしい」
その情報を速報としてお伝えしたが、両者の間にはどのような“対話”があったのだろうか。チンポムのリーダーである卯城竜太さんが話す。
「6月上旬、知人からの紹介で、僕から岡本太郎記念財団の平野暁臣さんにご連絡しました。その後すぐ、岡本太郎記念館にてメンバー全員でお会いし、ご挨拶やこの作品の説明をしたんです」
そのときのことを平野氏もこう述懐する。
「先鋭的なパフォーマンスとは裏腹に、とてもまじめで『純粋なヤツらだな』と思いました。ぼくは彼らのやったことを褒めようとは思わないけれど、認めている。岡本太郎をリスペクトしたうえで、真剣にぶつかっているからです」
そして、映像祭への出展を“平野氏から”依頼したという。
「太郎とぶつかることで新しい自分を見つけようとする、若い作家の“格闘”を見てほしかった。ジャンルが異なる5組のアーティストはそれぞれのやり方で太郎と真正面で対峙している。チンポムの作品もそのひとつであって、けっしておかしなものでないことは、見比べてもらえばわかるはずです」(平野氏)
映像祭では、チンポムのほかにタナカカツキ氏、柿沼康二氏、ヤノベケンジ氏、若木くるみ氏という4組の若手アーティストの作品が展示された。ヤノベ氏が出展したのは岡本氏の代表作「太陽の塔」の内部に防護服で潜入するというものだ。
◆岡本太郎を乗り越えてほしい
生前の岡本太郎氏はあまりにも有名な「芸術は爆発だ」という言葉でも知られるように、既成のものごとに“反逆”のスタンスを持つ人でもあった。平野氏はそんな岡本太郎が「神格化されることを危惧している」という。
「ただ単に『岡本太郎はすごい。元気をもらった』みたいなのは、これで最後にしたい。このイベントを、みんなが太郎を乗り越えようとするきっかけにして、(生誕から数えて)次の100年を新しい若い作家たちの100年にしてほしいです」
チンポムの女性メンバー、エリイ氏もこう話す。
「私たちは制作する際、過去と未来、両方の視点に立って作品を見つめるんです。アートというかけがえのない宝物に出会えたことは本当に幸運だと思う。(作品と)真摯に向き合って、作り続けるのみですね」
互いにぶつかり合い、新しいモノを作り出そうとするアーティスト同士の心意気。それを理解せずただ単に批判するのは、あまりに寂しい。
取材・文/秋山純一郎
岡本太郎氏の生誕100周年にあたる今年。さまざまな記念行事が行われるなかで、10月15日に表参道ヒルズで行われた映像祭「Roll Over TARO!」で、ある作品が展示された。Chim↑Pom(以下チンポム)作「LEVEL7 feat.明日の神話」の製作映像だ。
渋谷駅構内に展示されていた岡本太郎氏の壁画「明日の神話」に、チンポムが絵を付けたして事件になったのは今年5月のこと。以来、各メディアなどから非難を浴び、「岡本太郎に対して失礼だ」との声もあった。そんな状況にも関わらず、今回は本家のイベントにその問題作を展示した格好となる。日刊SPA!では過去に
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