吉田沙保里まさかの敗戦に会場沈黙も、川井梨紗子の金の瞬間ブラジル人たちは大爆笑
―[リオ五輪]―
レスリング女子53kg級で4大会連続の金メダルが有力とされていた、女王・吉田沙保里が負けた――。
今大会記者が観たなかで、かつてないほど日本人で埋め尽くされた、バーハ地区のカリオカアリーナ2は敗戦の瞬間、静寂に包まれた。
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試合前は、なにか祝祭ムードに包まれていた。前53kg級の3位決定戦が始まっているのにもかかわらす、通路でおしゃべりする観客。誰もがこの日の”メインイベント”前にテンションが高かかった。
例によって、チケットの安い席でブラジル人と観ていた記者。レスリング会場に来るブラジル人には「ヨシダ」の名前は有名、かつ発音がしやすいらしく、試合前から「ヨシダ!ヨシダ!」のコールが沸いていた。決勝の対戦相手のヘレン・マーリスがアメリカ人だったこともあり、彼女の名前がコールされると一斉にブーイング。アメリカの競泳選手4人が狂言強盗をやらかし、連日非難を浴びているからかもしれないが、それに負けじと「ヘレン!ヘレン!」と声援を送るアメリカ人。そんな彼ら応援団に対しても、足を床で踏み鳴らして”不満”を表すブラジル人たち。ただ、敵意むき出しというわけではなく、皆楽しそうに足を踏み鳴らし、なぜか爆笑している人もいた。
試合が始まってもテンションが高い観客たち。日の丸やハチマキ等グッズを手渡されたブラジル人は「ヨシダ!ヨシダ!」「ジャポン!ジャポン!」を繰り返す。日本から駆けつけた応援団の「ニッポン」コールと「ジャポン、ジャポン!」のコールが呼応して異様な雰囲気になっていった。
第1ピリオドに吉田が1ポイントを先制すると大歓声、しかし、相手のマーリスが守りの姿勢を見せ、吉田の攻撃をかわし逆転。しかし、それにめげることなく「ヨシダ!」の声がどんどん大きくなる。
大きな声援むなしく試合終了……伊調や登坂選手のような、終了間際での逆転を信じて疑わなかった記者も絶句した。アメリカ応援団の歓喜の声がこだますも、一瞬静まり返った会場。
うずくまり号泣する吉田選手。泣きながらの場内一周に再び「ヨシダ!ヨシダ!」の大きな拍手。表彰式の時もずっと泣いていた吉田選手。表彰台に上がる選手のなかで、唯一負けた直後に上がるのが銀メダルの選手。満面の笑みの金、銅の選手たちとはあまりにも対照的だった。
会場で悲嘆にくれる日本人に、記者のまわりのブラジル人たちは「銀メダルおめでとう、すばらしい試合だった」と英語で声を掛けていたのが印象的だった。
会場の重たい雰囲気を変えたのは……
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