デジタル捜査のプロ、埼玉県警の敏腕刑事が刑事を辞めた理由
昨年はインターネットバンキングに関わる不正送金被害が急増し、過去最高の水準に。SNSに載せた画像から個人が特定され、ストーカー被害に遭う事件が多発するなど、近年増加するデジタル犯罪。その専門家として、今、注目を浴びているのが元埼玉県警刑事部捜査第一課の佐々木成三氏だ。
佐々木氏はデジタル捜査班班長として携帯電話、スマートフォン、パソコン、監視カメラなどのデータ押収解析(デジタルフォレンジック)に精通し、数々の事件解決に携わってきた。埼玉県警に捜査一課主管のデジタル捜査班が開設されたのは’12年のこと。だが、その5年前の’07年から、佐々木氏は独自にデジタルデバイスの証拠分析を行っていたという。
「’07年、川口署に刑事として配属されたときから、携帯電話の機能や中に入っているデータに関心を持っていました。きっかけは、容疑者の携帯電話内のメニューを片っ端からチェックしていたとき、メモ帳中に犯行予告を見つけ、位置情報を基に立件したことです。それまでの捜査では通話履歴やショートメールしか見ていませんでしたが、携帯電話には捜査に役立つ情報が詰まっていると感じました」
翌’08年夏にiPhone 3Gが発売。佐々木氏もすぐに分析に取りかかり、携帯電話以上に“捜査ツール”として利用できる手応えを感じたという。このように最新機器を熟知する佐々木氏に、新設されたデジタル捜査班のリーダーとして白羽の矢が立った。
「デジタル捜査が最初に効果を発揮したのは、意外にも万引の案件でした。当初、容疑を否認していた万引犯のスマホを解析したところ、『万引は現行犯以外捕まらない』という趣旨のサイトを逃走中に閲覧していたことが判明。実際、犯人はそのサイト通りの供述をしており、検索履歴を分析した旨を伝えると、観念して自供しました。検索履歴には、その人の行動や考えが如実に表れてしまうんです」
ただ、実際の捜査では、容疑者のスマホ解析だけで即逮捕とはいかない。デジタルデータだけでは決定的な証拠に成り得ず、現場でのアナログな捜査活動も不可欠だという。「スマホの位置情報が犯行現場だったとしても、持ち主がその場にいたことの証明にはなりません。現場で聞き込みをして目撃証言をとり、防犯カメラを確認する。デジタルとアナログを掛け合わせることで、犯罪事実をゆるぎないものにするのです」
デジタル捜査のプロ、埼玉県警の敏腕刑事が刑事を辞めた理由
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