『TENET テネット』ノーラン監督が語る「これはタイムトラベル映画じゃない。スパイ映画だ」
9月18日に最新作『TENET テネット』が公開されるやいなや、満席の映画館が続出。クリストファー・ノーランの手掛ける作品が映画好きだけではなく、一般大衆までをも魅了している証拠だ。今回は映画ライターのよしひろまさみち氏がノーランのインタビューを担当。天才と称される彼の脳内に迫った。
その名前が広く知られるようになったきっかけは、アメコミ原作の『ダークナイト』。その後『インセプション』など難解なオリジナル作品を次々とヒットさせ、稀代の映画作家となったクリストファー・ノーラン。
可能な限りVFXは使わず、フィルムにこだわり、物語も自分で書く。練りに練られたその物語は、どれも映画史に残る傑作とされている。そんな彼の最新作『TENET テネット』が公開中だが、ご覧になった方の中にはあまりの難しさに脳がショートした人も多いはず。しかし彼は、「これはタイムトラベル映画じゃない。スパイ映画だ」と忠告する。
「時間の逆行という概念はコンセプトにすぎない。長年、自分が大好きなジャンルであるスパイ映画に取り組んでみたいと思っていたし、そこにデビュー作からずっと取り上げてきた“時間”というテーマをミックスすると、これまでに観たことがない作品になるんじゃないか、と気づいたんだ。
それが7年前のこと。それからずっと、この2つをうまく織り込み、それでいて大スペクタクルのスパイ・アクションにしようとしてきた。それで、これだけ長い時間がかかってしまったんだ」
時間の逆行ばかりが取り沙汰されるが、実は物語自体はシンプル。特殊部隊出身の男が、ある試験をパスし特殊任務にスカウトされる。それは、世界大戦の阻止。ロシアの大富豪が、世界中にちらばったあるモノを揃えてしまうと、世界は破滅に向かう。それを食い止めるために男はスパイとして世界を駆け巡る。ほぼ『ミッション:インポッシブル』や『007』の世界観だ。
「子どもの頃に最初に映画館で観た『007』シリーズは、『~私を愛したスパイ』。今でもこれはお気に入りの一つだ。当時、あれを観てスクリーンの可能性を感じたんだよ。こういう映画体験のおかげで、世界のどこへでも行けて、現実逃避することができる。今回はその感覚を呼び覚まし、観客にそれを提供することを心がけた。
それに、スパイ映画を作るなら、これまでに観たことがあるものを作ってもつまらない。世界中のロケや豪華なアクションでもって見せるスパイ映画というジャンルとしての造形と、時間というコンセプトを掛け合わせるのが、今回の構想の肝だったね」
VFXを極力控え、生のアクションにこだわってきたノーラン。『ダークナイト』では巨大トレーラーを前転させ、『インセプション』では路上で電車を走行、『ダンケルク』では本物の戦闘機を使用した。本作でも、空港のシーンで本物のボーイング747を建屋に激突させたり、都市部の高速道路を封鎖してカークラッシュさせるなど、やりたい放題で圧倒的迫力の映像を見せる。
「役目を終えた航空機が駐機している空港でジャンボ機を選ぶのは、ショッピングしているような気分だったね。また、エストニア・タリンの高速道路で撮影したカーアクションは、苦労の連続だった。
冗談みたいだけど、脚本時点で立てていた時間軸とキャラクターの絡み合いや、順行と逆行の自動車の関係性などの仮説が、全部間違っていたんだよ。もちろん軌道修正したけど、それからこのような複雑なシーンでは、シミュレーション映像の確認は必須となった」
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