ライフ

アルコール依存夫の暴力。酒を断った今でも、妻の恐怖心は永久に消えない

TAKEBE160224530I9A0481_TP_V

「いつまでも昔のことをネチネチうるさいな」と言う加害者。だが被害者にとっては「今」の話

パートナーに昔の話を蒸し返された時はどうする?

「最近は年齢を重ねたからか、夫の加害もマシになってきたのですが、どうしても許せない過去の加害を謝って欲しいんです。でも、きっとウンザリした顔をされるんだろうなと思います……」(とある相談者)  今の自分を見てほしいのに……。  DV・モラハラ加害者が、愛と配慮のある関係を作る力を身につけるための学びのコミュニティ「GADHA」を主宰しているえいなかと申します。  僕自身もDV・モラハラ加害者です。そのせいでたくさんの人を傷つけ、仕事や家庭が破綻寸前になり、ようやく自身の加害行為、それを生み出す加害的な思考・価値観を自覚しました。現在は日々自分の言動を改善しながら、妻と関係を再構築させてもらっています。  この連載では、僕自身の経験や当事者会での気づきを共有していきます。職場や家庭でモラハラに苦しんでいる方々、無自覚に加害を行っている方々の参考になれば幸いです。  自分の加害を認めGADHAに参加する方々が最も苦しむことの1つが、パートナーから昔の話を掘り返されることです。

酒を飲んでは、妻に絡んでいた筆者

 加害者からすれば、「最近は自分もだいぶ丸くなってきたし、良い関係になってきたと思ったのに、昔のことを言われると、もうどうしようもないし、居心地が悪くてうまく受け答えができなくなってしまう。今の自分を見てほしいのに……」ということになります。  僕もそういう経験があります。僕はアルコール依存症状態になったことがあり、日中からお酒を飲んでいた時期がありました。その頃の僕はからみ酒で、妻が自分の望む反応をしないと怒鳴り、次の日には忘れてケロッとしていることが何度も何度も繰り返されました。  妻との関係が崩壊しかけたとき、自分の問題を自覚してさまざまな形で問題解決してきました。お酒の飲み方もずいぶん変わり、酒量も大幅に減り、攻撃することはなくなっていました。  しかし、妻は「お酒を飲んだ日は、絶対に話したくない」と言い、どんなに少ないお酒でも、僕がそれを飲んだ瞬間から自分の部屋に入って、出て来なくなりました。  最初のうちは仕方ないと思っていた自分も、関係の危機も喉元過ぎれば熱さを忘れ「ちょっとくらい飲んでも最近は攻撃もしなくなったんだし、一緒に話したりしたい。部屋に閉じこもられるのは、嫌な感じがする」と言ったのです。  まさに「いつまでも昔の話を蒸し返すなよ」というわけです。
次のページ
「あなたがビールを開ける音を聞くだけで怖い」
1
2
3
DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

孤独になることば、人と生きることば孤独になることば、人と生きることば

モラハラ、パワハラ、DV
人間関係は“ことば”で決まる


記事一覧へ
おすすめ記事