更新日:2023年09月15日 18:38
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ハイデガー『存在と時間』から学ぶ「同調圧力の危険性」

 2023年3月13日から、日本全国で原則不要との発表があったマスクの着用。しかし、3か月以上が経過し暑くなってきた現在でも、「周囲の目が気になるから」との理由でマスクを着用し続ける人は少なくない。マスクに限らず、日本では“周囲の目”を過度に気にする「同調圧力」がはびこっており、社会の障害となっていることはこれまでにも数多く指摘されてきた。  そんな風潮の中、現在注目されるのが、『存在と時間』などの著書で知られるドイツの哲学者、マルティン・ハイデガーだ。現代日本でハイデガーが注目される理由を、NHKの人気番組から誕生した『まんが! 100分de名著 ハイデガー 存在と時間』(戸谷洋志、NHK「100分de名著」制作班:監修、佐々木昭后:イラスト)を通じて、哲学にも造詣が深い評論家の江崎道朗さんに語ってもらう。

20世紀で最も影響力を持った哲学書『存在と時間』とは?

「人間はどのように存在しているのか」  そんな人類共通のテーマに疑問を投げかけたのが、20世紀で最も影響力を持った哲学書と言われる、ドイツの哲学者であるマルティン・ハイデガーの『存在と時間』である。  ハイデガーが同書の中で取り上げたのは、「人間のネガティブな姿」。日常生活において、人間は自分の本来の生き方を見失い、空気を読み、「みんな」に同調する。同調圧力に流されることで人間は誰しも無責任になり、自分が何者であるかを忘れてしまう。ハイデガーはそう指摘した。 『存在と時間』では、なぜ人間は世間に同調し、無責任になってしまうのか。その状態から私たちが抜け出すにはどうしたらよいのかが語られている。  一方で、『存在と時間』はその知名度の高さと同時に極めて難解な哲学書であり、その内容を理解するのは困難であると言われてきた。より多くの人にハイデガーに触れてほしいという理由から、NHKの人気番組「100分de名著」や漫画でわかりやすく解説した本など、さまざまな形で『存在と時間』が甦っている。なぜ今、私たち現代人がハイデガーや『存在と時間』を学ぶのがいいのか?

教えられたことを検証するのが、高度教育の在り方

 一般の人にとって、なじみが薄い哲学という学問。そもそも哲学とは何か。その問いに対して、江崎さんはこう答える。 「『自分は何者か』『人生はどうあるべきか』『社会の中で自分はどのようなふるまいをするべきか』と考えるのは、人が生きる上で必要なこと。そして、これこそが哲学だと私は思います。 高校までは教科書に書いてあることを正しいものとして学ぶので、誰かが正しい回答をくれると思い込んでしまう人が多い。だが、それだと、現状を追認するだけで進歩も改革もない。そこで大学では、教科書に書いてあることが本当に正しいのか、立ち止まって自分で考えるようにすべきなんです。残念ながら現在の高等教育では、この視点が失われがちです。だからこそ本書のような漫画でわかる哲学書の解説書を通じて、『教科書に書いてあることが本当に正しいのか、世間で言われていることが正しいのか』を自問自答していくことが大事だと感じます」
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周りに同調する人が増えれば、国の政治はおかしくなる
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(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

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まんが! 100分de名著 ハイデガー 存在と時間

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