雑学

「マイナスの感情を乗り越える方法」は哲学者・デカルトに学べ

 私たちに降りかかる様々なマイナスの状況といかに対峙すべきか。『超訳ニーチェ』『嫌われる勇気』につづく、まったく新しいスペシャルな「哲学的人生指南書」として注目を集めている『デカルトの憂鬱』の著者・津崎良典先生が、「●●なとき、デカルトだったらどうするか?」という切り口でデカルト的思考法を伝授!

津崎良典氏

『デカルトの憂鬱』の著者・津崎良典先生

「マイナスの感情を確実に乗り越える方法」はデカルトに学べ!


――デカルトと聞くと、教科書に載っている哲学者という印象があって、名前を聞いただけで怯んでしまう人もいると思います。そんなデカルトに関する本を一般の読者に向けて書こうと思った理由は何ですか?

津崎:単刀直入に言えば、哲学は特権的な才能を持った人のための贅沢品ではなくて、すべての人に開かれた民主的なものだからです。それがいつ必要になるかは千差万別ですが、必ず出番のある生活必需品なんです。だから、「デカルト」の名前を一度や二度しか、あるいは一度も聞いたことがない人でも飛び込めるような本になるよう、テーマの選び方と書き方を工夫しました。同じものでも、どう提示するかで印象が変わってくるので、デカルトをどう見せるかにこの本を作る労力の大半を注ぎました。

――本の目次を見ると、「デカルトはいつも『方法に従う』」だとか、「デカルトは冷静に『驚く』」であるとか、動詞で構成されています。

津崎:最初のアイデアは、デカルトに関する「辞書のような本を作りたい!」ということだったんです。デカルト哲学のキーワードになる名詞を五十音順に並べて作ろうと思ったんですけど、名詞だと漢語が増えるということに気づいて、「じゃあ動詞にしよう」と。動詞には大和言葉が多くて、耳にやわらかく響き、ぐっと身近なものに感じられる。

――たしかに、哲学書を読んでいるというよりも、人生でいずれやってくるであろう難局を切り抜けるための実践的なアドバイスを指南されているような印象があります。

津崎:それも動詞を軸に構成することにした理由の一つですね。そうすることによって、難しい単語が並ぶ本ではなくて、体験型の本になると思ったんです。最近は体験型消費というのが流行っているようですけど、哲学においても体験するということはすごく重要で。18世紀の哲学者・カントは「哲学は学べない」と言ったんです。じゃあ何が学べるかというと、哲学することだけが学べる。つまり、実際にやってみなければ「哲学とは何か?」ということは学べないんです。自転車に乗る方法は自転車を見ているだけでは学べなくて、実際に乗ってみて初めて学べるのと同じように、哲学も体験しないことにはなにも始まらないんです。

――この本を読んでいると、デカルトという人間に触れているような感覚がありました。「デカルトは意外と『休む』」と言われると、ちょっと身近な感じがします。

津崎:そうですよね。デカルトだって聖人ではなくて、私たちと地続きの人間だということです。哲学者にアプローチするためには、「あの人だってひとりの人間なんだ」というところを絶対に外さないことが重要ではないか、と。そうすると、どういう動詞を選ぶかとなったときに、彼と同じ「人間」である自分は毎日いったい何をして過ごしているかを考えたわけです。そうすると、休むことだってあるし、おいしいものを食べたら驚くし、心が沈んだり挫けたりすることもあるし、いつか死ぬだろうなってことも考える。

津崎:卑近な例で申し訳ないんだけども、21世紀の日本人のおっさんである「津崎良典」を描写してみたときに、彼つまり私が日々直面している問題にデカルトならどう答えるか……ということを考えながら書いた本なので、極めてプライヴェートな仕上がりになったと思います。ちょっと恥ずかしいところもあるけれど、デカルトがうまい具合に答えてくれた。だから、教科書に書かれているデカルトとはずいぶん違うけど、専門家にしか知られていなかったデカルトの様々な側面を伝えることはできたのではないでしょうか。

――本のタイトルは『デカルトの憂鬱』となっています。これは僕が勝手にそう感じてしまったことかもしれないですけど、これを読むと、デカルトってよっぽどクヨクヨした人間に思えてきました。

津崎:それはもしかしたら、書いた人間がよっぽどクヨクヨしているからかも(笑)。ただ、シンプルにデカルトに迫っていくと、彼はできれば友達にしたくないタイプだと思わされる。なぜかというと、根に持つところがあるんですよね。自分に起きた嫌なことは絶対に忘れないし、批判に対する反論の機会を逃さない執念深さもある。ユーミンが歌う世界観とは程遠い湿っぽさですね。

津崎:デカルトはよく「豪傑で大胆で負けず嫌いだった」と語られるんだけど、「そうした性格の裏側には何が潜んでいるんだろうか?」と探ってみると、少なくとも私には、クヨクヨ、ネチネチした人間くさい部分が透けて見えてくる。それは、本書でも引用した、というか引用をお認めいただいた中島みゆきの世界観に通じるものです。そういうデカルトの姿を描いてみたということですね。

次のページ 
人間同士の関係をうまく処理するための技術

1
2
3
4
デカルトの憂鬱  マイナスの感情を確実に乗り越える方法

ニーチェ、アドラー……そして次にくるのはデカルト!!
【!】難問は分割せよ。
【!】悲しみは少しずつ解消せよ。
変えるべきは自分の「思想」だ。





おすすめ記事