日本がウクライナ支援を“続けなければならない”本当の理由。日本の「ある大失敗」が関係していた
昨今、地政学への関心が高まっている。中でも有名なセオリーといえば、領地内の自給自足を完結させるため、新たな領地を開拓しようとするロシア、中国といった大陸国家「ランドパワー」と、自由で開かれた交易を重んじる独立主体のイギリス、アメリカ、日本などの海洋国家「シーパワー」による対立だろう。
経済学者の上念司氏は、「世界で過去に起こった戦争をこの理論から紐解くと、より理解が深まる」と続ける。
経済で読み解く地政学』(扶桑社刊)の一部を抜粋、再構成してお届けする。
これまでの歴史上の戦いを振り返ると、19世紀のヨーロッパにおける帝国主義戦争は、シーパワーのイギリスがランドパワー同士の対立を利用して彼らを一つに結束させないようにする構図であることが分かります。
しかも、シーパワーのイギリスにランドパワーのフランス、ドイツ、ロシアなどが入れ替わり立ち替わり戦いを挑むという構図です。
イギリスにとっては、ランドパワー諸国が統一されて巨大な力を持つことを避けなければならないので、いろいろな駆け引きをしてランドパワー諸国を対立させたり、一部と同盟を組んでかき回したりするわけです。
このような大きなフレームワークで第一次世界大戦を解釈すると、シーパワーのイギリスがフランスとロシアというランドパワーと同盟を組むことで、同じランドパワーのドイツ、オーストリア、トルコを分断したという構図が浮かび上がってきます。
そして途中から強力なシーパワーとして台頭してきたアメリカがイギリス側に味方して参戦します。当時、アメリカに次ぐシーパワーだった日本もアメリカ同様、イギリス側で参戦しました。
つまり、第一次世界大戦では、シーパワー諸国は一致団結し、ランドパワー諸国は分裂していたわけです。
ところが、第二次世界大戦においては、日本はほかのシーパワー諸国であるイギリス、アメリカと分断され、ドイツ、イタリアといった当時のランドパワー側に味方するようになります。それは、陸海の最強国であるソ連とアメリカを同時に敵に回すことを意味します。
当時の政策担当者は「日ソ中立条約があるのでソ連は敵ではない」と信じていたのでしょうか?
もしそうなら、かわいそうなぐらいのお人好しだったとしか言いようがありません。結果的にソ連はこの条約を一方的に破棄し、敗戦直前の日本に総攻撃を仕掛けます。
満州や樺太、千島列島で犠牲者を出し、一部の日本人はシベリアに抑留され極寒の地で強制労働させられるというトンデモない人権侵害が行われました。これは国家による大規模な拉致事件と言ってもいいでしょう。
「ランドパワーVSシーパワー」の構図で読み解く、世界大戦の枠組みとは?
経済学者・上念司氏の新刊『
第一次世界大戦では、シーパワーがランドパワーの対立を利用した
日本がランドパワーに味方した第二次世界大戦
1969年、東京都生まれ。経済評論家。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一名誉教授に師事し、薫陶を受ける。リフレ派の論客として、著書多数。テレビ、ラジオなどで活躍中
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『経済で読み解く地政学』 大転換期を迎えた 世界の構造が丸わかり! |
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