シャープ復活プランを大提言。同社の技術力が再び市場で輝くには!?――大川弘一の「俺から目線」
メルマガ配信サービス「まぐまぐ」創業者の大川弘一。ITビジネス黎明期から会社を運営。子会社の日本最短上場、元役員の訴訟問題など、ビジネスの酸いも甘いも知り尽くした男が、話題の企業を始め、世に氾濫する時事・経済ニュースの“本質”を独自の視点で解析する。自身の回想録からサービスエリアでの豚生姜焼きバトル(!?)まで、誰もが……というよりむしろ、書いている本人にも予想外の長編シリーズとなった「シャープ全4話」、いよいよ今回、終結。
〈第5回 シャープ 最終回〉
みなさまこんにゃちは大川です。
暑い日がつづきますね。俺から目線、シャープの最終回です。
いままでのあらすじはこちら。
第一回「シャープ転落を読み解く鍵は、倒産した第一家電にあり」
第二回「シャープ・亀山工場への途上にあるサービスエリアで殿様商売の本質に会う」
第三回「需要に合わせて肥大化したシャープ・亀山工場は負の遺産なのか!?」
今回、感動の最終回、シャープ復活プラン。
寝ても覚めても同社のことばかり考えていたのですが、その結果をぐいぐいと書き上げたら、どうしてもまともな感じになってしまいまして、ちっともおもしろくありませんでした。
逆境にある企業が一筋の光明を見出して復活する話って、なんというか、文章も固くなるうえに、当たり前すぎて本当に退屈なものなのです。
ということでシャープ大逆転プランは10行くらいにまとめまして、残りはオススメの居酒屋紹介にあてていこうとおもいます。
■大川弘一のシャープ大逆転プラン
シャープ大逆転への秘策は、個人宅で不良資産化した家庭用太陽光パネルのEV充電への応用と、ロードサイド型店舗駐車場への非接触型充電システムの設置です。
トヨタが出資をしたWiTricityの磁界共鳴方式による自動車用充電設備を個人宅やロードサイド店舗(コンビニ等)に設置することで、2019年に0円に向かって下落する売電価格に悩むご老人を助けつつ、ロードサイド型店舗の集客にも貢献することができるようになります。ユーザーはスマホから周辺に設置された最安値の個人経営充電装置を検索し、事前登録されたクレジットカードで決済したり、自宅にある蓄電分をそのまま燃料を買うための通貨(充電債務)として払う。そしてロードサイド型店舗は客単価に応じて充電量上限を設定した駐車スペースで無料充電を提供し、周辺店舗との差別化に活用する。こうした自動車燃料の地産地消は必ずや世界中のトレンドにまで成長し、見事な復活を遂げたシャープはイケてる企業として生まれ変わってしまうことでしょう。
ちょっとはみでた。
さて。
シャープもめでたく復活しましたので、ここからは僕の愛するニュー王将の話をしようと思います。
ニュー王将は浅草寺の北、浅草五丁目のあたりにありまして、その外観からは想像のつかないレベルの料理をこれでもかと出してくださいます。
中でも揚げ物は都内でも類を見ないほどの水準で、盗塁に例えたら梶谷、犠打に例えたら2001年の宮本(ヤ)に匹敵するほどの信頼感を誇ります。
すべてのメニューが、味、姿、形、艶、そして独特の存在感を解き放ち、いつも行く度に自らのメンチ観を根底から覆され、はじめての方をお連れすると必ず「俺がいままで食べていたメンチカツはコロッケだったんじゃないか…?」と、みなさん喜んでくださいます。
もちろん同店のクオリティがメンチのみにとどまることはなく、カニサラダ、
ソーセージフライ、ナス味噌炒めなんかも極上のバランスで登板し、ハンバーグに至ってはよっぽど性格の良い牛を使わないとこの味は出せないんだろうなぁと毎回親牛に感謝しながら食べてます。
焼酎はキンミヤをボトルで注文し、大ぶりなチューハイグラスに緑茶をドボドボと注ぎ込み、マカロニサラダと絡まったハンバーグなんかを箸でつまみながらくだらないテレビを見上げた日には、あぁ、この世の極楽はここにあったかと、生きている喜びを肉汁と共に噛み締めずにはいられません。
そんな最高な状況で、港区で沈殿した邪悪な垢を緑茶ハイとの循環方式で腹の奥から押し出して、ひととおりの全身の筋肉を弛緩させたあとに頼むのが、シメの『カツ丼』です。
2000年に日本最短記録で上場を果たした結果、あらゆるきらびやかな業態のお店で数多くの放蕩を繰り返してきましたが、ニュー王将のカツ丼に勝る美味しい食べ物には一切出会うことができませんでした。それはまるでバルバッコアのピッカーニャのようでもあり、三陽の餃子のようでもあり、旧こづちのチャハーンのようでもあり、こうやって挙げていくとそこそこ出会ってるもんですね。
このカツ丼、量的には富士そばのカツ丼を1としたときに1.37程度のサイズで提供されます。しかしながらそのクオリティには40.5倍ほどのおいしさが込められており、湯気をモウモウに上げながらオープンキッチン方面から奥様がズッシリと運んできてくださるそのビジュアルは、1日の終わりに相応しい達成感に満ちています。
なんのはなしだっけ。
そうか。シャープの話でしたね。
要はお客さんは、時間とお金に余裕があればなんでも最高のものを選ぶんです。ところが戦後からの需要が一巡した日本社会において、ニュー王将のような感動的な性能差を日本製家電が与えられることはなく、現在の顧客が期待しているのは必要な機能と最安値です。つまりコモディティ化の完了した製品が圧倒的な存在感を取り戻す手法は需要に支えられた黄金時代を振り返っても見当たらず、初代ipodのような強烈な『再定義』があってはじめて、
『よくわからないけど欲しい!』
という需要を開拓できるのです。
つまり太陽光パネルという不良資産を活用したEV燃料の地産地消は、技術力に優れた会社が伸びしろのない事業から脱却して自らの再定義をして生まれ変わっていくための必然であり、それはまるで延命治療を続ける老体から、ふんわりと浮かび上がる早川魂そのものであり、結果的に現在同社が進めつつ有る直流家電の流れも大きなトレンドとして育てていくことができるでしょう。間に合えば。間に合えば。
さて。
結果的にマジメな感じになっちゃってなんとも気恥ずかしい限りですが、今は金曜の午後。もうすぐ同社の4-6月期決算が発表されます。このスコアがどんな結果になろうとも、伊勢志摩サミットにお忍びで随行するTeslaの特命係長あたりと亀山でガッチリ握手して、その一方で非採算部門の整理もしつつ、600億円の社債の償還に向かってビシっと復活を遂げていただければと、心から期待してやみません。MZ-2000でゴルゴ13の洗礼を受け、X-1でフラッピーやドアドアにハマった私がもう一度夢を見ることのできる同社の黄金時代を……オワー、なんだこの決算は。それではまた次回。
【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。慶応義塾大学商学部中退。大学を中退後、酒販コンサルチェーンKLCに在籍し、95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、無料メルマガと有料メルマガの配信事業を行う。99年に設立した子会社は設立から364日の日本最短記録でナスダックジャパンに上場したが、その際手にした資産も日本最短記録で見失う。
「みんなの投資資料室」http://synapse.am/contents/monthly/daiokawa
資金量300万円で、これから投資をしようとする人向けに、大川氏が毎日ウォッチしている株の「どこを見て、どれぐらい調査して、どう判断しているか」独自の情報収集術とその学習方法を会員限定で公開している。
「経営者のためのPoker入門」http://www.business-plus.net/business/1410/723708.shtml
〈イラスト/松原ひろみ〉
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