「日本企業の中国離れ」は止まらない【経済ブロガー・山本博一】

連載20【不安の正体――アベノミクスの是非を問う】

もはや中国で物をつくるメリットはない

「日本企業の中国離れ」は止まらない【経済ブロガー・山本博一】「世界の工場」とまで言われた中国ですが見る影がありません。日本企業の中国離脱が止まらないのです。

 ダイキン工業は家庭用エアコンの中国生産を2割減らし、滋賀県の工場での生産を20万台増産。ユニクロを手がけるファーストリテイリングはかつて9割以上あった中国生産比率を、今では6~7割にまで減らしました。TDKも秋田に工場を新設しています。

 この背景にあるのは、中国経済の失速でしょうか? チャイナショックが起きたのは今年の夏です。それにしては企業の対応があまりに早すぎます。

 考えられるのは、日本と中国の賃金価格差の縮小しかありません。中国の賃金自体が上昇したこともありますが、アベノミクスの推進によって円高が解消された影響が大きいでしょう。

 民主党政権時代の為替レートは1ドル=80円程度。安倍政権になり、現在では1ドル位=120円にまで円安が進みました。つまり、このたった3年間で中国と日本の賃金格差は相対的に3割~4割も縮小したのです。

 日本企業が中国に進出する意欲がなくなるのも当然です。中国産のメリットは安さだけ。安くもない「Made in China」など誰も欲しがりません。まさに量的緩和で円高を是正し、企業の国内回帰を促す。アベノミクスの当初の狙いどおりの展開だと言えます。

昨年日本の対中投資は4割近くも減少

 それでは、実際にどれだけ日本から中国への投資が減ったのでしょうか? JETROのレポートによると、日本から中国への投資額は次のように推移しています。

2012年/73.8億ドル
2013年/70.6億ドル
2014年/43.3億ドル (前年比38.8%減)
2014 年の対中直接投資動向 JETRO)

 なんと、昨年2014年は日本の対中国投資が前年比で38.8%も減少しています。もう完全に日本企業は中国に見切りをつけたといってもいいでしょう。

 しかし、この投資の減少幅は少々異常。中国との賃金格差縮小はもちろんですが、これには日本のTPP参加も影響しているように思います。どういうことかというと、TPP域外で生産された製品はTPPにおける関税撤廃の恩恵を受けることができません。つまり、TPP域外である中国で物を生産するメリットがより薄れてきているのです。

 2013年の日本のTPP交渉参加をきっかけに、中国以外のTPP域内の国に工場を移転した企業の存在を否定できないでしょう。

 さて、気になるのは今年2015年の投資状況です。昨年これだけ派手に投資が減れば、さすがに反動で少しは持ち直すかと思っていましたが、1~6月の上半期で前年同期比16.3%も投資が減っています。チャイナショックが起きた今年後半は、さらなる中国離れが加速するでしょう。

 中国で物を生産するメリットがなくなってしまったのですから当然です。

中国経済復活の鍵は消費税増税にあり?

 以前の記事「『中国経済は八方塞がり』そのヤバさ具合とは?」で今の中国経済は、日本のような量的緩和も不可能、財政出動も不動産バブルの助長を招くため効果が期待できない、八方塞がりの状態であることを紹介しました。

 私が習近平であれば、自国の経済を自力で立て直せない以上、日本の没落に期待するところでしょう。日本に工作員を送り、メディアに潜入して消費税増税を煽り、アベノミクスを叩きまくります。お国経済の失速はアベノミクスが引き金となっていることはまちがいないからです。

 消費税を10%に引き上げようものなら、さすがに日本経済も崩壊しかねません。アベノミクスを継続することは不可能になるでしょう。そうなれば日本は元の円高デフレに逆戻りです。円安で縮小していた日中の賃金格差が再び拡大し、日本企業はまた中国に戻るかもしれません。

 これでめでたく中国経済は復活……とまではさすがにいかないでしょうが、当面の危機は乗り越えられるかもしれません。

 わざわざ中国に塩を送ってやる必要はありません。消費増税は凍結あるのみです。

まとめ
・アベノミクスによる円高是正で日中の賃金格差が縮小
・日本企業の脱中国、国内回帰が加速
・TPP参加が国内回帰に拍車をかけている
・もはや中国は「世界の工場」の面影なし
・中国経済復活の鍵は日本の消費税増税にあり
・わざわざ中国に塩を送ってやる必要はない。消費税は凍結あるのみ

【山本博一】
1980年生まれ。経済ブロガー。ブログ「ひろのひとりごと」を主宰。医療機器メーカーに務める現役サラリーマン。30代子育て世代の視点から日本経済を分析、同世代のために役立つ情報を発信している。近著に『日本経済が頂点に立つこれだけの理由』(彩図社)。4児のパパ

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