NFLプレーヤーの“バトルロイヤル”体験――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第55回

「フミ斎藤のプロレス講座別冊」月~金更新 WWEヒストリー第55回


 ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスの3都市同時開催となった“レッスルマニア2”(1986年4月7日)のシカゴ版は、3時間ワクのPPV放映のふたつめのブロック。ニューヨーク版と同様、全4試合がラインナップされた。

写真はアメリカのスポーツ誌『SPORT』1986年スーパーボウル・プレビュー号表紙より

“レッスルマニア2”シカゴ版の超目玉カードは、現役のNFLプレーヤー6選手が出場した“オープン・インビテーショナル・バトルロイヤル”。同年1月のスーパーボウルでMVPを獲得した“冷蔵庫”ウィリアム・ペリーのプロレス体験にアメリカじゅうのマスメディアが飛びついた。(写真はアメリカのスポーツ誌『SPORT』1986年スーパーボウル・プレビュー号表紙より)

 ニューヨークのナッソー・コロシアムでのロディ・パイパー対ミスターTのボクシング・マッチが終了すると、PPVの画面はシカゴのローズモント・ホライズンからのライブ映像に切り替わった。

 第1試合は、“女帝”ファビュラス・ムーラにベルベット・マッキンタイヤーが挑戦したWWE世界女子選手権(1分25秒、ムーラがフォール勝ち)。“公式プロフィル”によれば、ムーラ(本名リリアン・エリソン)は1923年7月22日生まれだから、この時点ですでに62歳になっていた。

 前年の“レッスルマニア1”では、ロックシンガーのシンディ・ローパーとのコラボレーションでムーラのまな弟子にあたるウェンディ・リヒターがマスメディアの注目を浴びたが、リヒターはその後、契約問題をめぐりWWEフロントと対立。

 ムーラは、黒マスクのスパイダー・レディーに変身してリヒターからWWE世界女子王座を奪い(1985年11月25日=ニューヨーク)、女子プロレス部門の主役の座に返り咲くとともに、不満分子のリヒターをWWEから追放した。

 余談だが、ムーラはそれから17年後、満80歳の誕生日の記念に現役選手としてWWEのリングに上がり、親子というよりも孫の世代にあたるビクトリアからフォール勝ちを収めた(2003年9月15日=サウスカロライナ州コロンビア)。

 第2試合ではコーポラル・マイク・カーシュナーがニコライ・ボルコフにフォール勝ち(2分5秒)。カーシュナー伍長と“ロシアの白熊”ボルコフの対決は、米ソ冷戦構造のパロディーだった。カーシュナーは数年後、“怪奇派”レザーフェース(のちにスーパーレザー)に変身し、FMW、W★INGをはじめとする日本のインディー・シーンをハシゴすることになる。

 第3試合は、NFLプレーヤーがゲスト出場した今大会最大のアトラクションとなった20選手参加の“オープン・インビテーショナル・バトルロイヤル”(オーバー・ザ・トップロープ方式)。

 ウイリアム“リフリッジレーター”ペリー(シカゴ・ベアーズ)、ジンボー・コーバート(ベアース)、ハービー・マーティン(ダラス・カウボーイズ)、アーニー・ホームズ(ピッツバーグ・スティーラーズ)、ビル・フラーリック(アトランタ・ファルコンズ)、ラス・フランシス(サンフランシスコ・49ナーズ)のプロフットボール・プレーヤー6選手の“プロレス体験”にアメリカじゅうのマスメディアが大騒ぎした。

 WWE所属メンバーはアンドレ・ザ・ジャイアント、ビッグ・ジョン・スタッド、ブルーノ・サンマルチノ、ペドロ・モラレス、アイアン・シーク、ハート・ファウンデーション(ブレット・ハート&ジム・ナイドハート)、キラー・ビーズ(ジム・ブランゼル&ブライアン・ブレアー)、キング・トンガ、ダニー・スパイビー、トニー・アトラス、ヒルビリー・ジム、テッド・アーシディーの14選手。1960年代と1970年代のWWEのヒーロー、“人間発電所”サンマルチノと“魔豹”モラレスが“レッスルマニア”に登場したのは、この大会が最初で最後だった。

 オーバー・ザ・トップロープ方式のバトルロイヤルは、プロレスの試合というよりはスーパーヘビー級の大男たちによる“おしくらまんじゅう”のような光景になった。50歳のサンマルチノがE・ホームズ、43歳のモラレスがH・マーティン、それぞれNFLプレーヤーをトップロープごしに場外に投げ落としたシーンが前半戦のハイライトだった。

 シカゴの観客の視線は、この年のスーパーボウルでMVPを獲得した“冷蔵庫”ペリーの動きに集中していた。B・J・スタッドがペリーにケンカを売った。(つづく)

斎藤文彦

斎藤文彦

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

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